ニザダイの分布の中心は南日本で、台湾と香港からも報告があります。磯の浅いところでも見られ、幼魚は単独で行動していますが、成魚は群れを作るようになり、最大50センチメートルになります。
成魚では、尾の付け根に黒い斑紋が4から5個並んでいるのがよく目立ちます。後方にある斑紋の上にはそれぞれ1個のトゲ(板状の出っ張り)があり、左右両側に3から4個ずつあります。このトゲは鋭く、魚同士の争いや敵から身を守るときに武器として使います。釣りあげたときなどに、不用意につかもうとすると、このトゲで思わぬ大ケガをすることがあるのでご注意ください。鋭利な刃物で切ったような切り口とともに、激しい痛みを伴うようです。
このトゲには毒があるといわれていますが、詳しいことはよくわかっていません。
また最近の研究によれば、背びれや尻びれ、そしておそらく腹びれにもある固いトゲにまで毒があることがわかっています。こちらの毒は、それほど強力なものではないようですが、身を守る上では効果があるはずです。私自身もニザダイ幼魚のトゲが刺さったとき、単なるトゲの痛み以上のものを感じることがありました。
ニザダイの体色はふだんは一様に灰色ですが、ときおり数秒程度の短い間、体に芸術的なデザインを浮かび上がらせることがあります。
葛西臨海水族園「東京の海」エリアの展示水槽にいるニザダイを見ていると、この体のもようは、仲間に対するあいさつ(信号)だと思われますが、意味や使い方について詳しいことはわかっていません。機会があれば観察してみてはいかがでしょうか。
写真上:尾の付け根にある鋭いナイフのようなトゲ
写真下:ときおり体に浮かび上がる芸術的なデザイン
〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕
(2010年10月22日)
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