「東京の海」のエリア、「小笠原・磯」の水槽にいるタマカエルウオは、水の中が苦手な魚です。
タマカエルウオが水の中に入ることはほとんどありません。水槽には水が吹き出すしかけがありますが、水が出てくると大あわて。ぴょんぴょんと水面をはねて移動し、岩を登っていきます。
大きな胸びれで体をしっかりと支え、しなかやな体の後半部(尾部)をクネッと曲げてから力強くのばしてキック! 海水の吹き出しは約1分ごとなので、ぜひカエルウオの名に恥じないすばらしいジャンプを見てやってください。
荒波がくだけちり、つねに波しぶきがかかるような岩の上がタマカエルウオの生活場所です。こうした場所は外敵も少なく、競争者もあまりいません。でも、そのかわりに温度の変化が激しい過酷な環境です。荒波にさらわれない工夫や、乾燥に耐える工夫も必要です。タマカエルウオの体は粘液におおわれ、乾燥しにくくなっており、また皮膚呼吸をすることもできます。
下を向いた幅広い口で、岩の表面にはえた藻類を食べていると考えられていますが、水槽の中では、植物性のものよりもむしろエビのミンチなどを好んで食べます。食事に対する幅広い好みも、タマカエルウオがこのような場所でくらせる秘密かもしれません。
タマカエルウオは水中は苦手ですが、濡れている場所から離れることはありません。まさに海と陸の狭間でくらす魚なのです。
〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕
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