ニホンアマガエルは水田でふつうに見られるカエルですが、ほとんどの(50年前の95%以上)水田がなくなった東京では、2010年版東京都のレッドリスト(東京都の保護上重要な野生生物種)に掲載されるほど少なくなってしまいました。
水族園の屋外に拡がる人工の小川を中心に自然を再現展示した「水辺の自然」にはニホンアマガエルがすんでいます。姿はなかなか見ることができませんが、鳴き声を聞くことはできます。
一般に、カエルが鳴くのは、おもに繁殖期にオスがメスをひきつけるためです。ニホンアマガエルは繁殖期以外の季節にもよく鳴くので、何のために鳴いているのかよくわからない場合も多い、例外的なカエルです。
今の時期「水辺の自然」でニホンアマガエルの鳴き声が聞こえるのは限られた範囲です。日中は「ゲッゲッゲッ……」とたまに鳴く程度で、しかも「ゲッ」が数回だけの短い鳴き声で、合唱になることもありません。
ただし、夜になると鳴き方が変わります。1匹が鳴き始めると周りにいるほかのカエルたちも次々に参加して「ゲッゲッゲッゲッ……」と鳴き続けて合唱となります。合唱は大きく響きわたり、近くの道路や駐車場でも聞こえるほどです。夜は海から陸に向けて風が吹くので、 300メートルほど離れたJRの葛西臨海公園駅でも、風に乗ってカエルの合唱が聞こえてくることがあります。
6月中旬から産卵が始まり、今がとくに繁殖の盛んな時期で、鳴き声にも力が入っているようです。
写真上:鳴いているニホンアマガエル
写真中:ニホンアマガエルの卵
写真下:「水辺の自然」案内図
〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕
(2010年07月16日)
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