ニュース
「紅海」水槽をリニューアル──擬岩の話
 └─2010/04/23

 2010年3月31日、葛西臨海水族園の世界の海エリアでは「紅海」の水槽をリニューアルしました。リニューアルといっても、もとから展示していた「紅海」に分布する魚類はそのままにして、水槽内の岩をはじめとしたレイアウトをすべて新しくしています。

 「紅海」水槽の写真(上)をごらんください。新しくした岩やサンゴが入っていますが、これらは強化プラスチックや樹脂でできた人工のものです。悪い言い方をすればニセモノですが、それには理由があります。

 水槽のレイアウトをおこなうのは飼育係の役割のひとつで、そのとき私たちが一番重視することは、水槽の中のすべての生物が居場所を確保できるようにすることです。この人工の岩は、自由な形に加工できるので、中を空洞にして、魚の隠れ家にすることも可能です。

 「紅海」水槽はそれほど大きな水槽ではなく、ブルームテールラスなどの大型の魚から、キンギョハナダイのような小型の魚まで、さまざまな大きさの魚がたくさん入っています。大きな魚は小さな魚を追い回して攻撃することがあり、またさらに、サンゴ礁の魚にはなわばりを持つものが多く、なかまどうしでケンカすることもあります。

 争いで負けた魚は、逃げ場がなければ死ぬまで攻撃されてしまいますから、逃げ込むことができる人工の岩は、弱い魚にとって大事な緊急避難場所になるのです。さらに、岩に付けているサンゴも作りものですが、弱い魚が身を隠すのを助け、水槽のすべての魚が安全に暮らすのに役立っています。

 ニセモノといってしまいましたが、これらの人工の岩とサンゴは専門の職人が作成してくれたものです。飼育係と職人とで打ち合わせをし、見た目が自然で、より多くの生物がいっしょに飼育できるものを目指しました。幸い魚たちも居心地良さそうにしているので、さらに生物を追加してにぎやかにしていく予定です。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2010年04月23日)



ページトップへ