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水中のグライダー? フライングガーナードの展示
 └─2010/04/02

 空を飛ぶ魚といえば、みなさんは何を思い浮かべますか? 多くの方は大きな胸びれをしたトビウオのなかまを想像するのではないでしょうか。トビウオは水面近くをダッシュして海面から飛び上がり、胸びれを広げて200~400メートルもの長い距離を滑空することができます。

 また、トビウオに近いなかまのダツは、光に向かって突進する習性があり、夜間のダイビングなどではダツに衝突されないよう、光を照らす方向に注意が必要です。

 葛西臨海水族園の世界の海「ブラジル」の水槽では、セミホウボウのなかまのフライングガーナードを展示しています。大西洋や地中海の暖かい海に広く分布し、水深80メートルまでの砂や泥のある海底や岩礁域などにくらしています。トビウオと同じように大きな胸びれが特徴的な魚ですが、水の上に飛び出すことはありません。ふだんは胸びれを少し広げた状態で水槽の中を泳いでいますが、何匹かまとまってスイスイと泳ぐ光景は、飛行機の編隊のように見えなくもありません。

 この大きな胸びれは泳ぐときにじゃまになるようにも見えますが、自然の海では、敵に出会ったときにウチワにように大きく広げ、急に大きな魚になったように見せて相手を驚かせ、急場をしのぐ忍術のように使うと言われています。

 フライングガーナードは水中を泳ぐだけでなく、歩くこともできます。海底に着地したときは体の下にある腹びれを伸ばし、歩くように前後に器用に動かしますが、水槽の中では泳ぐ方が好きなのか、歩く姿はあまり見かけません。

 セミホウボウという名前は、昆虫のセミの翅のように長い胸びれのあるホウボウという意味ですが、ホウボウは胸びれの前にある細長い鰭条(きじょう:ひれを支える線状の器官)を指のようにチョコチョコと小刻みに動かしながら海底を歩きます。鰭条は餌のにおいを感じることができ、歩くのと同時に、餌となるゴカイやエビなどを探し出すセンサーの役目も果たしています。

 水槽の底を見おろすような、少しユーモラスな顔つきをしたアジのなかまのルックダウンが泳ぐあいだを、飛ぶように(?)泳ぐフライングガーナード。葛西臨海水族園でぜひごらんください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2010年04月02日)



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