海岸では干潮時に岩のくぼみなどに海水が取り残されて、水たまりができることがあります。この水たまりは、タイドプールやしおだまりと呼ばれます。その大きさはさまざまで、中には魚や貝、ウニやヒトデ、カニ、ヤドカリ、イソギンチャクなど、数多くの生き物が見られるものもあります。
葛西臨海水族園の「渚の生物」の水槽内には、タイドプールを再現した場所があります(写真上)。それほど大きくはありませんが、生き物が上から見えるようになっています。今回はその中の生き物をいくつかご紹介します。
ウメボシイソギンチャクは波の当たる岩の上にくっついています(写真中)。触手を閉じていると、その姿は梅干しのようです。このイソギンチャクは、体内で小さなクローン個体を作り、口から吐き出します。展示水槽でも、小さな個体がいくつか見えることがあります。
ウメボシイソギンチャクより大きくて、水の中にいるのはミドリイソギンチャクです(写真下)。「ミドリ」とつきますが、触手の色はピンク色をしています。体の側面にイボがたくさんあり、これが緑色なのです。最近、毎日餌を与えるようにしたところ、大きくなり見やすくなりました。
黒紫色の大きなナメクジのような姿をしているのはアメフラシ。刺激すると紫色の液を出すことで有名です。餌を探しているのか、よく動き回るので見つけやすいと思います。藻類を餌として入れています。
このほかにも、カエルウオやドロメなどの魚やイトマキヒトデ、ニホンクモヒトデを展示しています。これらの生き物を観察しやすいように、水槽内の多くの岩を取り出しました。それでも小さな魚たちは、ちょっと見ただけではわかりにくいかもしれません。しかし、よく見てみると、一時的に海から取り残された水たまりの中でくらす生き物たちを見つけることができると思います。自然の海でも、タイドプールを見つけたら、生き物を驚かせないよう、また、自分が落ちないようにしながら、そっと中を覗いてみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小木曽正造〕
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