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「1日飼育スタッフ体験」感想文をご紹介します
 └─2010/01/14

 こちらでお知らせしたとおり、葛西臨海水族園では2009年12月、開園20周年を記念して「1日飼育スタッフ体験」の催しをおこないました。

 参加された埼玉県上尾市の I.T.さんに感想を書いていただきました。許可を得てご紹介します。

◎海の生きものに近づいた日 埼玉県上尾市 I.T.

 朝の8時、水族園の正門前に集合。集合といっても飼育スタッフ体験者はたった二人。たくさんの応募者の中から抽選にあたった、とても運のいい二人だ。嬉しさたっぷりだが、抽選にはずれた多くの方々に申し訳ない気持ちも持ちつつ園に入った。

 開園の1時間以上前から作業が始まる。長靴にはき替え、担当スタッフのあとをついて水槽の裏側へ回ると、大小のタンク、機械類、たくさんのパイプやバルブ、細い通路など、ふだん外から観客としてしか見ていなかった水族園の内部は工場のようだ。

 まずは水槽の掃除のお手伝いだ。水槽の壁面に着いた藻をていねいに取っていく。使う道具はスタッフ自作の掃除道具で、塩ビのパイプやスポンジのほか、歯ブラシまで利用して作られてあった。

 開園までに掃除を終えると、つぎは給餌の作業。それぞれの生きものの体調を見ながら餌を与えていく。葉っぱのような魚、リーフィーシードラゴンは、えらが1分間に何回動くか、一匹一匹チェックして健康状態を確認する。水槽ごとに使った道具と手を必ず洗うのは、病気予防のためだ。

 回遊するクロマグロの給餌は豪快そのもの。丸のままのアジに向かって、巨体が水しぶきをあげて食べにくる(頭から水をかぶってしまった!という、嬉しい体験)。水槽の外(観客側)のスタッフと中の給餌スタッフが無線で連絡をとりつつ、食べ具合を見ながら餌を落としていく。

 植物のように動かないテヅルモヅル(ヒトデのなかま)が餌を求めて動くとき、ああ動物なんだと感心したり、岩に見えたものが大口を開けて餌をとるオニダルマオコゼと分かって納得したりで、給餌の時間は海の生きものたちにグンと近づいた時間になった。

 予備飼育室で最後に見せていただいた赤い小さな小さな生きもの、ホネクイハナムシ(深海に沈むクジラの骨にすむゴカイのなかま)は、生命誕生のなぞを解くひとつの生きものと聞いて、生命38億年という途方もない時間もなにか身近になったようだ。


※ホネクイハナムシは、現在は展示しておりません。

写真上:水槽の裏側で職員から説明を受ける
写真中:マグロへの給餌
写真下:I.T.さんの絵日記より

(2010年01月14日)



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