葛西臨海水族園では、世界中のさまざまな海の生き物を見ることができます。その中でも、とくに“変わった形”の魚は大人気です。
今回ご紹介するヘラヤガラも、“変わった形”で人気のある魚です。細長いからだと大きく突き出た口は、他の魚とはまるで違うので、すぐに見つけることができるでしょう。
この一見目立つ“変わった形”ですが、海の中では身を隠すのに役立っていると言われています。頭を下にして縦になって泳いだり、何かに寄り添って泳いだりする姿が知られていますが、そうすることで、獲物や天敵から身を隠しているのです。餌となる小魚を食べるときは、気づかれないようにそっと近づき、突き出た口で一気に吸い込みます。
身を隠すことに役立っているのは形だけではありません。ヘラヤガラは、生活する環境に合わせてからだの色を変えることも知られています。葛西臨海水族園では、「世界の海」エリアの「南シナ海」水槽と、「グレートバリアリーフ」水槽で色の違うヘラヤガラを見ることができます。
「南シナ海」水槽では、少し地味な色ですが(写真上)、尾のほうに白い縞模様が入っているヘラヤガラ、「グレートバリアリーフ」水槽では明るい黄色一色のヘラヤガラを見ることができます(写真下)。
興味深いことに、「グレートバリアリーフ」水槽で見られる黄色のヘラヤガラも、水槽に入る前は「南シナ海」水槽の個体と同じような色をしていました。「グレートバリアリーフ」水槽の環境がヘラヤガラのからだを黄色に変化させたのです。
「南シナ海」水槽はやや深場の潮通しのよい海、「グレートバリアリーフ」水槽は、浅場のサンゴ礁をコンセプトにしています。ヘラヤガラのからだの色とともに、それぞれの水槽の環境の違いにも注目してください。
〔葛西臨海水族園 飼育展示係 中沢純一〕
(2009年11月27日)
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