葛西臨海水族園では、東京の海エリアの「伊豆七島の海2」水槽にツクシトビウオをあらたに展示しました。
トビウオのなかまは、漢字で「飛魚」と書かれるように、水面を飛ぶことでよく知られています。他の魚が水面を飛び跳ねるのとは違い、水面上をグライダーのように滑空します。その距離は100メートルを超えることもあります。
トビウオのなかまは、なぜそんなに飛ぶことができるのでしょう? その秘密は体のつくりにあります。
まず、上下ふたまたに分かれた尾びれは下側が長く、飛び出すための推進力を得るのに役立ちます。そして、左右の大きな胸びれは飛行機の翼のように広がります。また、体を軽くするために浮き袋がよく発達しており、消化管は短く、胃を持っていません。このような特徴のおかげで、他の魚に追いかけられたり、船などに驚いたりした際、すばやく飛んで逃げることができます。
水族園ではこれまでにも数回トビウオのなかまを展示してきました。やや小型の水槽で約3か月間展示したことはありますが、今回のような大型の水槽での長期間展示は実現していません。
大型水槽で長期間飼育がむずかしいことの主な原因として、餌を十分に食べられないこと、壁への衝突、体のこすりつけによる衰弱などが考えられます。そこで今回、トビウオを餌によく慣らすために、あらかじめ長期にわたって裏側の水槽で飼育しました。また、壁への衝突防止とダメージ軽減のため、水槽の水面から上の壁にかけてネットを張りました。また、急激な明るさの変化に驚かせないよう、一部の照明を夜間も点灯するようにしました。
残念ながら、水槽内でトビウオの滑空をお見せすることはできませんが、彼らの特徴である尾びれや胸びれを観察することができます。長期間展示できるように、細心の注意を払いながら飼育しています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小木曽正造〕
(2009年10月16日)
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