最近、葛西臨海水族園「渚の生物」水槽で聞かれた来園者の会話です。
父親「ほら、魚がバタバタしているよ」
子ども「おぼれてるみたいだね?」
女性「見てあの魚、顔超スッてる!」
男性「かゆいんじゃない?」
ボラの動きへのユニークなコメントに、思わず笑みが浮かんでしまいます。
ボラは日本全国でごくふつうに見られる魚で、海の沖合いから沿岸、都市部の内湾や河口、川の中流部まで、じつにさまざまな場所に姿を現します。さらに、古くから各地で食用とされてきた歴史もあり、とても知名度の高い魚です。
2003年、品川区の立会川に大群で現れた時、テレビで流れた映像をおぼえている方も多いことでしょう。当時、ボラを展示していた水槽の前では、「ボラ?ボラってあのボラでしょ?」という声をよく耳にしましたが、今回はそれ以来の人気かもしれません。
「渚の生物」水槽は人工的に波を起こしている半屋外の展示で、日あたりのよい浅場には海藻が繁茂しています。そこに大きさ50センチほどのボラが入ってきて、来園者のすぐ足元で平然と泳いでいます。そして、頭を左右に振りながら、海藻に口を押しつけ、素早く伸ばしたり引っ込めたりしています。
注目を浴びているこの一連の動きは、ボラに特徴的な餌の食べ方です。口に生えている微細な歯で海藻の表面についている細かな藻を刈り取っていると考えられており、それを集めて、吸い込んで食べているのです。飼育係が与える餌にはあまり興味を示さず、日がな一日、“頭フリフリ、口パクパク”をくり返しています。みなさんものんびりと、ボラのユニークな食事風景をごらんください。
ちなみに、ボラは砂や泥底に口を突っ込んで、微生物や藻などを砂泥といっしょに食べたりもします。大きめの砂粒は口からパッと吐き出しますが、細かな砂泥は胃の中で藻などの餌を砕くのに役立っています。こちらの食事風景は、「東京の海」エリアの「運河」水槽でどうぞ。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕
(2009年09月11日)
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