葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「地中海」水槽では、最近いろいろな魚が繁殖行動を見せてくれます。日中、開園時間内に見られる行動についてご紹介しましょう。
スズメダイのなかまであるメディタレイニアンクロミス(写真上)は、岩の表面に卵を産みつけます。この卵を保護するのはオス。卵のそばを泳ぎながら卵に新鮮な海水を送る「ファニング」と呼ばれる行動や、死んでしまった卵やゴミを口でくわえて取り除く行動が見られます。卵は直径1ミリほどなので、個々の卵を見わけるのは困難ですが、たくさん並んで産みつけられているので、じゅうたんのような広がりとして見えることもあります。
現在、オスは3尾いますが、オスが体を波打たせるようにしながら急上昇と急下降を繰り返していることがあります。これは、自分の守る産卵場所にメスを誘い込む行動で、「シグナルジャンプ」と呼ばれます。誘われたメスは岩にお腹をこすりつけるようにしながら産卵し、オスはそこに精子をかけて受精させます。
テンジクダイのなかまであるロアデルジェ(写真中)の場合、オスが卵をくわえて保護していることがあります。オスとメスはふだん区別がつかないのですが、あごの下が大きくふくらんでいる個体は、卵の塊を口にくわえたオスとわかります。これまで、2~3尾のオスが繰り返し卵の保護をしているところが見られています。
また、メスがオスに向かってお腹を突き出すように体を反らせたり、2尾が横に並んで円を描くように泳いだりしていることがありますが、これは産卵前に見られる行動です。観察を続ければ、産卵の瞬間が見られるかもしれません。
アキシラリーラス(写真下)やオセレイテッドラスは、ベラのなかまとしては珍しくオスが海藻で巣を作り、そこにメスが産卵することが知られています。水槽内では最近、オスが海藻を口にくわえて岩の隙間に集める行動が見られます。今後、巣にメスを誘う行動や、メスの産卵行動が見られるかもしれません。
魚の繁殖行動が見られるのは「地中海」水槽だけではありません。ふだんとちょっと違った行動を目撃したら、しばらく観察を続けてください。新たな発見があるかもしれません。
2009年9月12日(土)と13日(日)には、16歳以上の方を対象とした閉園後のイベント「大人のための観察会」を開催します。繁殖行動を中心に観察する予定です。申込締切は2009年8月21日。興味のある方はご応募ください(
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〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕
(2009年08月14日)