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水族園のアーティスト集団、マイワシ
 └─2009/07/10

 みなさんはレオ・レーニの絵本『スイミー』のお話を知っていますか? 小さな魚が群れになって大きな魚のかたちをつくり、自分たちを食べようとする大きな魚を追い払うお話ですね。今、葛西臨海水族園に入って一つ目の水槽、アカシュモクザメの泳ぐ「大洋の航海者:サメ」には、スイミーたちのように大きな群れをつくる魚がいます。それはマイワシです。

 マイワシは沿岸から沖合の海面近くを群れで泳ぎながら生活しています。口を大きく開けて泳ぎ、えらにある「鰓耙」(さいは)と呼ばれるクシのような部分で、水中のプランクトンをこして食べます。また、マイワシは食用魚種として利用され、私たちの食卓にものぼります。

 さて、マイワシはなぜ群れをつくるのでしょうか? 魚が群れをつくる理由のひとつは、襲ってくる敵から身を守ることです。小さな魚もたくさん集まれば、全体で大きな魚に見せかけることができます。これはスイミーたちと同じ作戦ですね。

 また、敵が襲ってきたとき、その前を無数の小さな魚が動き回れば、狙いをさだめにくくすることができます。さらに、まわりを見ている個体がたくさんいるので、いち早く敵に気づくこともできます。そして、残念ながら襲われてしまっても、少しの犠牲を残して群れのほとんどが逃げることができます。

 このように、群れを作ることで個々の魚が身を守れるだけでなく、群れ全体が生き残ることにもつながります。ほかにも群れをつくる理由には、集団で効果的に餌を見つけたり、繁殖相手が探しやすかったり、多くの利点があります。

 水槽の中でマイワシたちがつくる群れは、まん丸のボール、グルグル回る竜巻、ドーナツ、そしてクジラなど、いろいろなかたちに見えます。キラキラと光りながら、統率されたかのような動きでかたちを変えるマイワシの群れは芸術的です。また、マイワシの群れに見入っていると、突然アカシュモクザメがマイワシのトンネルから現れてびっくりすることもあります。ぜひ、葛西臨海水族園にお出かけになり、マイワシたちの織りなすアートをごらんください。

写真上 キラキラ光るマイワシの群れ
写真下 マイワシのトンネルを抜けるアカシュモクザメ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕

(2009年07月10日)



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