野外でのんびり過ごすには、とてもいい季節になりました。天気のよい日には、葛西臨海水族園の「水辺の自然」エリアを、ゆっくり散策してみてはいかがでしょうか。小川とその周辺の環境を再現したこのエリアは、飼育係が世話をしなくても多くの生き物がくらし、自然の姿を見ることができます。
その中から今回は「カナヘビ」を紹介します。「ヘビ」という名前がついていますが、トカゲのなかまで、頭から尾の先までの長さは25センチくらいです。
カナヘビは日本全国に分布し、草むらや林のまわりでくらしていて、昆虫やクモなどを食べています。田んぼや畑、庭先などにも顔を出すため、郊外の住宅地でも見られ、よく知られている生き物の一つです。
つい先日、「水辺の自然」で5匹ものカナヘビが集まって「ひなたぼっこ」をしていました(写真)。ちゃんとカナヘビが5匹写っています。クリックして拡大してみてください。5匹をすぐに見つけられますか?
私たちが目にするこうした「ひなたぼっこ」は、カナヘビが生きていくために、なくてはならない大切な仕事です。トカゲなどの爬虫類は「外温動物」と呼ばれ、まわりの温度をじょうずに利用して体温を調節しています。私たち人間は食べ物をたくさん食べることで体温を維持しているので、それにくらべると、カナヘビはとても省エネな体の仕組みをもっていると言えるでしょう。
昼間活動するカナヘビは、天気のいい日には朝早くから「ひなたぼっこ」で体温を上げ、餌を捕まえたり敵から逃げたり、素早い動きをするための体を準備しています。太陽からの放射熱だけでなく、温まったモノからの伝導熱も利用するため、石の上などに体をぺったり張り付けていることもよくあります。そんな状態でも危険を感じると、茂みの中にさっと逃げ込んでしまいます。ひなたぼっこはカナヘビにとって大事な時間なので、そっと観察してください。
「水辺の自然」のカナヘビ観察ポイントは、下流の橋の上や木製ベンチのわき、階段の石垣などです。3メートルくらい先に目をやりながら、ゆっくり歩き、カナヘビを探してみましょう。見つけたら、いっしょにのんびり「ひなたぼっこ」もいいですね。
写真上:ひなたぼっこ中のカナヘビ
写真下:5匹いますが、わかりますか?
※カナヘビ5匹の位置を示した
写真はこちら。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕
(2009年05月23日)