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エビなの?カニなの? ランゴスティーノ
 └─2009/05/08

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「チリ沿岸」水槽に「ランゴスティーノ」を展示しました。日本から太平洋を挟んで地球の反対側にある国、チリの浅い海底に生息する生き物です。前脚が長いハサミ状で、体が平べったいのに腹部を丸めているため、エビのなかまにもカニのなかまにも見えますが、分類的にはヤドカリ類に近いコシオリエビ科です。

 コシオリエビ科のなかまは日本近海にも分布していますが、深海で生息するものが多く、ランゴスティーノのように浅瀬でくらすなかまは、比較的少ないようです。さらに浅瀬のなかまは小型で見つけにくいので、コシオリエビ類を海で目にする機会は少ないと思います。

 ランゴスティーノは水槽の一番前の砂地にいます。5センチていどの大きさなので、注意深く探さないと見逃してしまうかもしれません。見つけたら、口元をよーく見てください。ひょっとしたら、食事中かもしれません。水槽には、巨大なフジツボのなかま「ピコロコ」のえさとして、全長 0.4ミリていどのプランクトンをたえず流しており、ランゴスティーノも流れてきたプランクトンを捕まえて食べます。(ピコロコのニュースはこちら↓)

・ニュース「大きなフジツボ、ピコロコ」(2009年4月17日)

 どうやって、食べているのでしょう? 口の脇に大小2本ずつ、毛の生えたカマのような形をしたものがついています。これは顎脚(がっきゃく)という器官です。ランゴスティーノは、この顎脚をさかんに動かし、プランクトンをかき集めて食べるのです。食事中なら、この顎脚がシャカシャカとよく動いているのですぐわかります。

 ハサミのような前脚も飾りではなく、水槽の魚に与えたえさのかけらが流れてくると、前脚を使って器用に捕まえ、口に運びます。大きなえさも小さなえさも、ランゴスティーノは前脚や顎脚をたくみに使うことでじょうずに食べることができるのです。

 コシオリエビ科のなかまはみなそうなのですが、ランゴスティーノも腹部を前方に折り曲げています。危険が迫ると、腹部をばねのように使って、いきおいよく後ろに逃げることができます。ところが、この記事のための写真を撮ろうと水槽ぎりぎりまでカメラを近づけたところ、逃げるどころか、こちらに砂を吹きかけようとしてきました。折り曲げた腹部を使って足元の砂を吹きかけ、威嚇することもできるのでしょうか? ちょっと不思議な体験でした。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕

(2009年05月08日)



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