海の中で群れをつくってくらしている魚は数多くいますが、今回は、水槽の中でとびきり美しい群れをつくっているブルークロミスという魚をご紹介します。
ブルークロミスは、北米と南米にはさまれた大西洋側に分布しているスズメダイ科のなかまで、葛西臨海水族園では「カリブの海」水槽で展示しています。カリブ海はサンゴ礁の広がる暖かい海で、「カリブの海」水槽にもそうした海の美しい魚が泳いでいます。その中でもいちばん目を惹くのは、ブルークロミスの群れだと思います。
この魚は全長10センチ程度の小さな魚で、水槽では現在 200尾以上のブルークロミスがくらしています。“ブルー”という名のとおり、青く美しい魚なのですが、それがつくる青い群れは、水槽をとても美しく飾ってくれます。
「カリブの海」水槽にはニセモノの枝サンゴがたくさん入っており、ブルークロミスは、なにか危険を感じると、いっせいにサンゴの枝の中に入って姿を隠します。ふだんは水槽のアクリル前のよく見える場所で群れていますが、水槽の前で観察していると、群れがいっせいにサンゴの中へ隠れる行動を目にすることがあります。
ブルークロミスは小さな魚です。水槽にいっしょに入っているスパニッシュホグフィッシュなどは他の魚を襲って食べることもあるので、ブルークロミスは自然状態と同じく、いつも危険にさらされています。単独でいるよりも群れでいる方が判断も早くて正確になりますし、もし襲われた場合でも、標的になる確率がさがるため、水槽内でも群れをつくって精一杯身を守っているのです。
ブルークロミスの水槽を見ていると、青い群れの美しさに感心しますが、群れには群れをつくる切実な理由があるようです。ブルークロミスの美しさとともに、他の魚から身を守る動きも観察してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕
(2009年01月16日)
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