井の頭自然文化園には現在、アフリカタテガミヤマアラシのオスとメスが1頭ずついます。2頭はとてもなかがよく、ドイツの哲学者ショーペンハウアーの寓話「ヤマアラシのジレンマ」とはちがい、寄り添って休んでいるすがたがよく見られます。
アフリカタテガミヤマアラシは齧歯目(げっしもく)ヤマアラシ科に属するネズミのなかまで、野生ではおもに木の根や葉などを食べる「植物食」の動物です。園ではサツマイモやニンジン、リンゴにパン、小松菜、キャベツ、青草などを与えています。歯は一生伸び続け、とても丈夫です。伸びすぎを防ぐため、展示場にはたくさんの木(「かじり木」)を入れています。
生息地は、高温少雨で乾燥したアフリカ中部と北部です。ということは、水に接する機会があまりないと考えられます。当園のヤマアラシは日本生まれなのですが、やはり本能的に水に濡れるのがとても苦手なようで、ちょっとでも水がかかろうものなら、背中の針を逆立て走り回り、パニックになってしまいます。
しかし、今までの展示場には雨をしのげる場所がわずかしかなく、急な夕立のときなどは濡れてしまうことが多々ありました。そこで、小屋を建てようと思い、いろいろなデザインを描いて専門の方に製作依頼をしました。できあがりは完璧! すてきな小屋を作っていただきました。
そして、去る7月22日の休園日、他の職員の協力のもと、約30分かけて展示場に設置することができました。さて、ヤマアラシの反応はというと……。
やはり、突然の小屋の登場に驚いたようで、しばらく背中の針を逆立て、展示場内を右往左往していました。そして、その日は小屋に近づくことなく終了したのでした。
今日まで小屋の中での休息は確認できていません。設置当初は、小屋をかじってしまうことを心配していたのですが、まだ大丈夫のようです。でも、慣れてきたら……。しばらく成り行きを見守りたいと思います。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 川手美咲〕
(2008年08月08日)
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