◎文化園四季折々
毎週お送りしているこの「文化園四季折々」が始まって1年が経とうとしています。文化園のちょっとしたできごとや小さな発見をみなさんにお伝えするために、井の頭自然文化園の職員が交代で執筆しています。
昨年(2006年)5月の第1回は、園長の私が「音が消えた水琴窟」と題して、ゴールデンウィークのエピソードをご紹介しました(
リンク)。
そして、2007年春。「園長の番ですよ~」(えっ、悪魔のささやき?)。ふたたび私にお鉢がまわってきました。「うむ~」、さて困った。何を書いてよいやら……。動物の話題は、直接世話をしている飼育係にはかなわないし、植物もやはり専門家がいるし……うむむ。というわけで、今回はかなり地味な話題をご紹介することにしましょう。
園内のソメイヨシノはすでに葉桜にかわり、花の主役は八重咲きのサトザクラやハナミズキへと移ってきました。眠っていた木々も芽吹きはじめ、新緑のまぶしい季節到来です。来園者の方々に文化園でさらに快適に過ごしていただこうと、職員一人ひとりが日々ちょっとした工夫をこらしています。名づけて、「文化園こざっぱり作戦」。大規模な施設整備が進まない当園ですが、ならばせめて質の向上をと、園内の雑草や施設のサビなどに気をつけています。
今回ご紹介するのは、こだわりの一品(?)「散水栓」です。これは、野口雨情の書斎を移築した「童心居」前の散水栓を、むき出しにせず、竹でおおったしたものです。気づかずに通り過ぎる方も多いと思いますが、まわりの風情をこわさないよう、くふうしているのです。何気ない一品が逸品に変わるのです。こんなところにも細やかな心づかいがあるのです(ちょっとおおげさですが……)。
もうひとつが「蓑垣」(みのがき)。蓑は、わらなどで編んだ雨具のこと。蓑垣は、竹穂を用いて蓑を模した垣根です。これも童心居内にあります。垣根ひとつでも日本文化の一端を見ることができるのです。最近では高級旅館でさえ、露天風呂の目隠しに人工垣根を使っているところがありますが、あのプラスチック製の垣根が公園などでも幅をきかせています。たしかに管理コストを考えると人工垣根になるのもやむを得ないかもしれません。
しかし、井の頭自然文化園のこの蓑垣はほんものです。職員が研修を受け、また資料を参考にしながら、腕をみがき作りあげています。ほかにも、「金閣寺垣」「銀閣寺垣」など、伝統的な垣根も再現しています。文化園では「天然物」にこだわり、雰囲気の醸成に気をくばっています。きわめて「地味」な話題ですが、こんなところにも文化園のよさがあるのです。
動物はもちろんのこと、園内のこうした小さな演出にも目を向けていただけると、また文化園の奥深さがわかっていただけるのではないでしょうか。なお、今回紹介した垣根は、来月もっとくわしく説明いたします。お楽しみに。
写真上:サトザクラ
写真中:散水栓
写真下:蓑垣
〔井の頭自然文化園園長 永井清〕
(2007年4月13日)