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オオスズメバチの飛来──2006/11/10

◎文化園四季折々

 日本で最も危険な野生動物──それはヒグマやハブ、ホホジロザメなどでなく、住宅地にもいるスズメバチ。毎年数十人近い死者が出ています(クマやヘビは数人以下)。中でも注意しなければいけないのが、世界最大のスズメバチであるオオスズメバチでしょう。

 スズメバチはミツバチと違って何度でも刺すことができ、「毒のカクテル」とも呼ばれるさまざまな成分の混合物を注入します。オオスズメバチは体長4センチにもなるので、毒の量も群を抜いています。地中や樹洞に営巣し、近年では都市部でもしばしば見られるようになりました。

 オオスズメバチは5月頃冬眠から目覚めた1匹の女王が巣を作り、やがて多数の働き蜂が生まれ、他の昆虫を襲って幼虫の餌にします。その攻撃力は大きく、大型甲虫やカマキリまで襲うほど。秋には次世代の女王やオスが生まれ、餌の昆虫も少なくなり、攻撃的になって他種のハチの巣を襲います。井の頭自然文化園に野生のニホンミツバチの巣があることはこのコーナーでもご紹介しましたが、それを狙ってオオスズメバチが園内に飛来するのです。

 今年は熱帯鳥温室の近くにあったニホンミツバチの巣が襲われました。1匹ずつ立ち向かって全滅するセイヨウミツバチと違って、ニホンミツバチは集団でスズメバチを包み込んで蒸し殺す戦法を取り、かなわないと見ると巣を放棄します。この巣も幼虫と蛹が残されてしまい、1~2匹のオオスズメバチに運ばれているようでした。

 園内にスズメバチの巣ができると、近づく人間は何もしなくても攻撃されてしまいます。見つけたら、ただちに防護服を着た専門家に駆除してもらいます。また、園外から1匹で偵察しにくるスズメバチも、なるべく駆除しています。ただし今回のように、放棄された巣に食糧を求めているときは、餌運びに夢中なのか、あまり人間を気にしません。それに、1匹ずつ駆除しても効果がないので、ミツバチの巣が空になるまで待った方が安全です。そこで、まわりを立入禁止にして、近くにトラップをかけたりしています。

 もしオオスズメバチを見かけても、絶対に手で追い払ったりせず、静かにその場を離れ、係員にご一報ください。

写真上:放棄されたミツバチの巣から幼虫を運ぼうと順番待ちをしているオオスズメバチ(2006年10月27日撮影)
写真下:カマキリを狩るオオスズメバチ(2005年10月撮影)

〔井の頭自然文化園教育普及係 井内岳志〕

(2006年11月10日)



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