ニュース
音が消えた水琴窟──2006/05/19
◎文化園四季折々

 「井の頭自然文化園」の英文表記は、「Inokashira Park Zoo」 としています。でも、「文化園」の意味をうまくあらわしていないような気がします。みなさんもごぞんじのとおり、井の頭自然文化園は動物園がすべてではなく、彫刻館や植物園など、さまざまな文化の薫りをただよわせる憩いの場です。

 動物園として見ると、ちょっと「ジミ」。動物の情報も、上野動物園や多摩動物公園にくらべると多くはありませんが、今後、「文化」の薫りを折にふれてお伝えしていく予定です。もちろん動物の話題もありますよ。

 さて、第1回目の今回は、「音が消えた水琴窟」。井の頭自然文化園には、有名な童謡作詞家・野口雨情の書斎を移築した「童心居」が本園の奥にあります。その庭に、職員がつくった「水琴窟」があるのをごぞんじですか。

 水琴窟(すいきんくつ)は、土中に埋めた甕(かめ)に水滴を落とし、その反響音を楽しむしかけです。江戸時代の庭師が、排水機能と同時に音を楽しむために作ったのが始まりとのこと。

 ところがゴールデンウィークのある日、水琴窟の音が突然聞こえなくなりました。はじめは原因がわからなかったのですが、考えてみると思いあたるふしがあります。それはまさにゴールデンウィークならではの現象でした。

 井の頭自然文化園が今年のゴールデンウィークに迎えた入園者総数は昨年におよびませんでしたが、それでも天気のよい日には1日に1万人をこえ、水琴窟も大勢の方がためされていたようです。

 水琴窟の音を聞くためには、柄杓(ひしゃく)で汲んだ水を落とします。ふだんなら甕に入った一日分の水は翌朝までに土中にしみ出し、音が反響するのに適度な空間ができるのですが、連休中は多くの方が水をかけたために甕が満杯になり、地中への浸透が追いつかなかったようです。

 そこで、水琴窟を急遽使用中止し、灯油ポンプを使って水をくみ出して、復旧させました。こんなところにもゴールデンウィークの影響が生じたのです。連休をすぎた今、井の頭自然文化園で風流な「音」をゆっくり楽しんでみてはいかがでしょう。

〔井の頭文化園園長 永井清〕

(2006年5月19日)



ページトップへ