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命のバトンをつなぐ──モルモットの人工哺育
 └─ 2025/02/24
 モルモットは一度の出産で1~5頭の赤ちゃんを産みます。井の頭自然文化園でのモルモットの赤ちゃんの出生体重は40~110g程度で、同じ母親から生まれてきたきょうだいであっても個体差が大きくみられます。

 2024年9月7日、モルモットの赤ちゃんが生まれました。生まれた赤ちゃんは全部で4頭、うちオスが3頭、メスが1頭でした。オスの赤ちゃんは3頭とも体が大きくしっかりとしていましたが、メスの赤ちゃんは50gと小さく、少し弱々しく感じられました。

 人間の赤ちゃんと同様、モルモットの赤ちゃんも生後しばらくは出生体重を下回ります。これは赤ちゃんが摂取する量より、体から出ていく水分量などが上回っているためと考えられています。通常、成長するのにしたがって赤ちゃんの体重は増えていきます。しかしこのメスの赤ちゃんは、出生体重を下回ったあと、なかなか体重が増加しませんでした。また、母親のおっぱいがうまく見つけられず、お尻のあたりをさぐったり、きょうだいの毛を吸ったりする姿も見られました。

 このまま十分に母乳を飲めない状態が続けば、このメスの赤ちゃんは弱って死んでしまいます。そこで獣医と相談し、メスの赤ちゃんを母親ときょうだいからは離さずとも、1日に数回、飼育係が人工のミルクを哺乳する「人工哺育」をおこなうことにしました。


シリンジでミルクを与えているようす

 哺乳初日、ミルクの味とシリンジに違和感があったのか、赤ちゃんはミルクをあまり飲んでくれませんでした。しかし、翌日から徐々に飲み始め、体重も少しずつ増えていきました。しだいに、母親・きょうだいとすごしていても、人の気配を感じると「キュイー!!キュイー!!!」と鳴きながら寄ってくるようになりました。小さな体から出る大きな声に、生きることへの意欲の強さを感じました。

 モルモットの哺乳期間は約1か月半です。50gと小さく弱々しかったメスの赤ちゃんも哺乳が終わるころには300gにまで成長し、ほかのきょうだいたちと比べても体格差はなくなりました。そして2025年2月現在、このメスはオスとお見合いをし、お母さんになる準備をしています。モルモットの繁殖において人工哺育が必要になることはあまりありません。しかし、今回のように命のバトンをつなぐお手伝いをすることができたのは、飼育係としてうれしく感じたできごとでした。


お見合いのようす。右にいる茶色のモルモットが人工哺育をしたメス

 井の頭自然文化園で生まれたモルモットの赤ちゃんや親子のようすは、動物園(本園)のヤギ横「あかちゃんのおうち」でご覧になれます。

〔井の頭自然文化園飼育展示係 山口〕

(2025年02月24日)


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