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井の頭自然文化園のモグラ──その姿は見えなくとも
 └─ 2025/01/23
 最初にお伝えしますが、井の頭自然文化園でモグラは飼育していません。園内を見回すと高さ10~15cmくらいの小山が見つかります。


園路のそばで

 土を運んでいる途中で落としたようにも見えますが、この小山は、じつは野生のモグラがトンネルを掘ったときに出た土を地上へ押し出したものです。これを「モグラ塚」といいます。園内を探すと意外とぽこぽこあります。たまに子どもに踏みつぶされ、蹴散らされていることもありますが、モグラ塚にもモグラの個性や状況を垣間見ることができます。

 湿っている小山は先日掘り出したばかりの新しい塚。土が乾いていててっぺんが平らな山は掘りだされてしばらく経った塚。

湿った山は掘ったばかり
乾いててっぺんが平らなものは時間が経った塚

 土の状態が違うのか、はたまたモグラの性格なのか、消極的な小さい塚や、直径40cmを超す大量に盛り上げられた塚など、同じモグラ塚といえども違いがあります。

消極的な小さな塚。げんこつサイズ
ここ最近で最大の塚

 また、連続した塚をたどって行くと、ジグザグしている途中でちょっとわきにそれて掘り進めた痕跡などが読み取れることもあります。井の頭自然文化園にはいくつもの銅像が立っていますが、その土台に当たり、前に進めなくなったと思われるような塚があることも。もしかすると土を出そうとしたら真上に銅像があって土を出せなかったので横へ横へと進んでいったのかもしれません。地面を掘り進めているときのモグラのようすを想像するだけでも楽しいです。

ジグザグに進んだようす
銅像の土台にぶち当たって前に進めなかったようす

 土の中という真っ暗闇の中で生活しているモグラはほぼ目が見えません。しかし、全身をセンサーにして、とくに鼻先にある「アイマー器官」というとても敏感な触覚センサーを使い、獲物や天敵が動いたときに起こるわずかな風のゆらぎすらも感じとって、食べものを探したり、トンネルを掘り進めたりしています。私たちからは見えない暗い地面の中で、モグラは巧みに生きています。

 モグラ塚は本園の南側半分にとくによく見られます。土の中にいるのでモグラ自身を見ることはできませんが、展示場からちょっと目をそらして園路の小山に注目してみるのもおもしろいですよ。

 なお、井の頭自然文化園内に生息するモグラはアズマモグラですが、コウベモグラは多摩動物公園の「モグラのいえ」で見ることができます。

多摩動物公園の「モグラのいえ」
コウベモグラ

〔井の頭自然文化園飼育展示係 藤岡〕

(2025年01月23日)


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