井の頭自然文化園では水生物園に2羽、動物園の「大放飼場」に1羽のタンチョウを飼育しています。8月の中ごろ、水生物園のタンチョウの羽が生え換わりました。そこで、タンチョウをはじめとする鳥の羽についてお伝えします。
羽にはいくつかの種類があり、それぞれ役割があります。
まず、羽は「正羽(せいう)」と「綿羽(めんう)」の大きく2種類に分けることができます。正羽は中央に「羽軸」と呼ばれる軸があるのが特徴で、翼の部分にあたる「風切り羽」や「尾羽」などが含まれます。そして風切り羽には「初列風切り羽」「次列風切り羽」「三列風切り羽」の3種類があり、飛ぶために役立っています。

羽の名称
一方、綿羽は体の肌に近い部分に生えていて、綿のようにふわふわとしているのが特徴です。英語では「ダウン」といい、保温性が非常に高く、寒さから身を守る役割があります。
羽は鳥たちにとって重要なものです。そのため鳥たちは水浴びや羽づくろいを頻繁におこない、羽の手入れを欠かしません。しかし毎日のように手入れをしていてもしだいに羽は傷んでいってしまうため、定期的に換羽がおこなわれます。「換羽」とは古い羽が抜け落ち、新しい羽に生え換わることです。鳥の種類によって換羽がおこなわれるタイミングが異なり、数年に一度のものもいれば、年に何回か生え換わるものもいます。そのときには飛ぶために重要な「風切り羽」も抜け落ちます。
タンチョウは一般的に2年に一度、繁殖期が終わる7月から8月ごろに換羽が始まります。そのとき、タンチョウは風切り羽が一気に抜け落ちるため、新しい羽が生えるまで一時的に飛べなくなります。

換羽中の放飼場のようす。1日でこれだけの羽が抜ける
翼は腰のあたりで折りたたまれているため、タンチョウの姿を後ろから見ると、黒い羽は尾羽のように見えますが、実は翼のつけ根に生える三列風切り羽になります。次列風切り羽にも黒い羽がありますが、比べてみると羽の形状が少し異なります。

上が次列風切り羽、下が三列風切り羽
換羽の時期は風切り羽である黒い羽も抜け落ちるため、ふだんは風切り羽が重なって見えない尾羽がよく見えて、尾羽は白くて意外に短いことがよくわかります。
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換羽中 | 換羽後 ※左(換羽中)とは別の個体 |
水生物園で飼育している2羽のタンチョウは、それぞれ換羽する年が異なるので毎年いずれかの個体が換羽するようすをご覧いただけます。ご来園の際は、ぜひ鳥たちの羽にも注目して見てみてください。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 村上咲葵〕
(2021年09月25日)