井の頭自然文化園では今年も恒例の冬の風物詩である雪吊りと霜除けを、リスの小径出口の向かい側にある日本庭園にこしらえました。2014年3月啓蟄あたりまでごらんになれます。
雪吊りといえば金沢の兼六園が有名ですが、豪雪地帯では重く湿った雪から木を守るため、帆柱から降ろした吊り縄(荒縄)を枝に直接結ぶ「りんご吊り」や、幹から吊り縄(荒縄)を降ろす「幹吊り」など実用的な要素の強い作りが特徴です。雪の少ない都内の雪吊りは、鑑賞を目的とした要素が強く、豪雪地帯の手法とは異なっています。
当園の雪吊りは、帆柱の頭に藁(わら)の穂先で編んだわらぼっちを飾り、吊り縄は荒縄より細い内藤縄を使用しています。木の素性を見て下方の枝に細めの竹をかんざし状に刺す「ばち」を設置し、「ばち」に黒いしゅろ縄をぐるりと配して「ぶち」を作り、吊り縄を「ぶち」に結ぶことにより美しい円錐を作り出しています。
また、雪吊りの雰囲気をさらに引き立たせるため、周囲に霜除けも作っています。本来、霜除けはソテツやデイゴなど暖かい地方の植物を藁やこもで巻いて霜から守るためのものですが、当園では鑑賞を目的として大・中・小の三体を丸太を芯にしてこしらえています。霜除けは「巻きおろし」と「鎧」(よろい)の2種類を作りました。
「巻きおろし」型は藁の穂先を下に向けて作っていき、頭には藁の元で編む「うらぼっち」を乗せて仕上げます。「鎧」型は雪吊りと同じ穂先を上にして編んだ「わらぼっち」を使いますが、藁の元の部分を長めに揃えて鎧のように見せるのが特徴です。当園では15年ぶりにこしらえました。どちらの型も裾の部分の押さえにしゅろ縄で模様を取り、化粧飾りにふさわしい仕上がりになっています。
この雪吊りと霜除けについては、2014年1月11日と2月11日に「VisitほっとZoo」キャンペーンの中の「植物ガイド『日本庭園の冬構え』」として、現地で解説をおこなう予定です。ぜひご参加ください。
また、井の頭自然文化園「花ごよみ」でもご案内していますので合わせてごらんください。
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「花ごよみ『雪吊り』」(2013年12月18日)
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「花ごよみ『霜除け』」(2013年12月18日)
写真上:金沢兼六園の(左)吊り縄の枝の結びと(右)幹吊り
写真下:文化園の雪吊りと霜除け
〔井の頭自然文化園施設係 星野真一〕
(2013年12月20日)