2011年4月に上野動物園から異動になり、はな子の担当になってはや3か月が経ちました。これまで10数年飼育係をしてきましたが、ゾウの担当は初めてで、過去にゾウの飼育経験のある先輩たちが私にかけてくれる言葉は決まって、「はな子は気難しいゾウだから気をつけて」でした。私も動物園で若手とはいえない年数を過ごしており、はな子の情報も聞いていましたから腹をくくりました。
前置きが長くなりましたが、「はな子の近況」といっても私は以前のはな子のことは噂でしか知らないので、今のようすと比べることができません。この3か月で私自身が肌で感じたはな子のようすをお伝えします。
現場初日、いささか緊張気味ではな子との初顔合わせをしました。ゾウ飼育未経験ゆえの先入観のなさが手伝い、怖さは感じませんでした。はな子はといえば私を「鼻もひっかけない」ようすで、多分飼育スタッフとは思わなかったのでしょう。
数日が過ぎ、はな子は私を気にかけるようになりました。鼻先を私に向けてしきりに匂いを嗅ぎます。私ははな子に声をかけて、匂いだけでなく声も覚えてもらおうと思いました。
ほぼ1か月が経過してから、距離を保ちつつスキンシップを始めました。はな子は鼻先で私の手をつかみ口の中へもっていこうとします。顔をこすってやるととても優しそうな眼付きになり、私はこの時点ではな子に認められたのだろうと判断しました。もしかしたらはな子の群れの順位付けで一番下に格付けされただけかもしれませんが。
今では甘えるような仕草もするようになり、私も柵越しに直接えさを与えるまでになりました。
はな子といい関係になれてよかったと思いますが、この間には野生動物としてのはな子も何度か目撃しました。何が原因だったのかはわからないのですが、怒ったはな子は眼付き、雰囲気、行動が急変します。はな子の様々なようすを見てきて、はな子はさみしがり屋の甘えん坊で人が大好きだけれどちょっぴり気難しいゾウなのだと思いました。
今までにもお知らせしてきたとおり、4月から飼育方針が変更になりましたが、はな子の行動や生活が単調なものにならないよう、新しい遊具の設置と新たな試みをおこないます。これについては次の機会にご報告したいと思います。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 田口眞隆〕
(2011年07月15日)
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