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アジアゾウはな子の近況[4]
 └─2011/06/17

 2011年4月からアジアゾウ「はな子」の担当になりました。私は23年前から多摩動物公園でアジアゾウを通算16年間担当していたのですが、はな子を担当するのは初めてです。

 はな子は、多摩のゾウたちとはずいぶん性格が違いますが、はな子にとって適切な接し方をしていこうと思っています。

 5月29日、台風の影響による前線の発達で、井の頭自然文化園も雨降りでした。はな子は雨が嫌いだそうですが、この日は、ほどなく放飼場に出て特製のサツマイモ、リンゴ、ニンジンのスライスを食べていました。

 午前11時に特製のはな子ドリンク20リットル(20倍希釈のスポーツ飲料と50グラムの塩を混ぜたもの)を与えたところ通常以上の飲みっぷりです。水分を多く摂ってくれるのはよい傾向なので、追加で同量を与えたところ、途中から体に浴びはじめました。特製ドリンクを浴びてしまうと、スポーツドリンクの糖分で体がベタベタになるだけでなく、皮膚への影響が心配です。そこで途中から「ただのぬるま湯」に変えました。

午前11時10分から始めた「お湯」浴びは、結局40分後まで続きました。その間飼育係は、お湯を運ぶわんこ蕎麦職人状態でしたが、はな子が喜んでいる姿を見れば苦労は報われます。

 午後のティータイムにも、はな子は十二分にお湯浴びをしてくれました。時間は測らなかったのですが、30分程度はしていたでしょう。

 このお湯浴びは、さらなる朗報をもたらしてくれました。昨年秋より、はな子の背中にはボツボツができていたのですが、今回のお湯浴びと、飼育係による背中のブラッシングにより、このボツボツの多くがはがれおちてくれたのです。文字通り恵みの雨になりました。

 ところで、2011年5月27日に「アジアゾウはな子の近況[2]」をご紹介しましたが、その内容について、はな子の寝部屋に設置した質問箱にご質問をいただきましたので補足します。

「アジアゾウはな子の近況[2]」

質問1 「直接飼育」から「準間接飼育」に移行してしまうと、心身ともにはな子のケアができないのではないか?

 この手法は1990年代に日本に導入され技術が確立されてきました。「準間接飼育」は英語では「Protected Contact」と言います。直訳すると「防御しながら接触する飼育」となります。言いかえると「準直接飼育」という言い方もできます。つまり「接触する機会がない」わけではないのです。飼育係とはな子の間に柵を介する違いはありますが、人との接触を好むはな子と飼育係が接触しないわけではありません。
 この飼育方法は、「飼育係の安全は確保できるが、多少のケアはできても直接飼育ほどのケアができない」と思われがちですが、使用する柵の形状等によっては、ほぼ直接飼育並みにケアが可能です。
 はな子と飼育係が同じ空間で「ふれあう」光景を楽しんでこられたお客様は物足りないと思われるかもしれませんが、今後も心身ともに十分なケアをおこなっていく予定です。

質問2 施設の改修に伴うはな子のストレスが心配。そこまでして改修する必要があるのか?

 改修といっても大規模な改修をおこなうわけではありません。既存の柵などを利用し、多少の部材を追加するだけです。既存施設をほとんど壊さずに改修をおこなう予定ですので、騒音などもほとんど出ないと思われます。
 はな子の視線から見ても、目に映るものが大きく変化するわけではないので、問題のない範囲だと考えています。

〔井の頭自然文化園飼育展示係 高橋孝太郎〕

(2011年06月17日)



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