井の頭自然文化園資料館のげっ歯目動物に注目した特設展示「ちゅうげっ歯類展」では、マウス、ラット、野生ハツカネズミ、カヤネズミ、ハタネズミ、ウスイロアレチネズミの6種を展示しています。
その中でもマウスの展示装置は大きく、7つのアクリルケースとパイプを組み合わせて特別に作ったものです。
メインの大ケースは横幅150センチメートル、奥行きと高さが40センチメートルあり、当初はマウスが立体的に動き回れるつくりものをこの中に置く予定でした。
ほかに、30センチ四方の立方体の中ケース2個、20センチ四方の小ケース2個、中ケースの高さを2倍にした高ケース2個を、大ケースのまわりに配置し、直径6センチのアクリルパイプで連結してあります。
ケースは専門の業者に製作を依頼しましたが、ケースの配置とパイプの長さを調整しながらの組み立ては自分たちでおこないました。
これまで、このような形の展示装置にマウスを入れたことはなく、ほとんどぶっつけ本番なため、マウスがどのように動くのか予想できずに組み立てを始めました。試しに2つのケースをパイプでつないでマウスを入れてみたところ、意外にパイプの中を頻繁に行ったり来たりし、これならなんとかなるとの目論見で組み立てが終わったのは、オープンの前日です。
大ケースの中の立体的なつくりものはまだできていなかったので、回転車を1つだけ置いて、用意した100匹のマウスを展示装置に入れてみました。マウスたちはパイプの中を動き回り、1つだけの回転車も交代で回し続けていましたが、ペットのハムスターが回している回転車は似合わない気がして、結局取り出しました。
大ケースはがらんとした空間になってしまい寂しい感じがしましたが、それによりマウスの動きはおもしろく変わりました。回転車があったときに集まっていた多数のマウスは大ケースに入らなくなり、両側に1つずつあるパイプの連結口で大ケースの中のようすをうかがっています。そして、意を決したように反対側の連結口まで一気に走りぬけて行きました。広すぎる空間はマウスを不安にさせているようです。大ケースは期せずして、マウスの全力疾走を見ることができる場所になりました。
そのほかのケースにもマウスの好みがあるようです。あるケースはマウスが重なり合ってしまうほど混雑しているのに、別のケースはガラガラであったり、餌を入れた後そのケースを目指して集まってくるマウスの流れとは、逆に進むマウスがいて大渋滞が起きたりと本当にユニークです。
ケースとパイプは今後も増設予定です。マウスの動きも気まぐれなので、ようすをうかがいに何度もおいでください。
写真上:(左)小ケース(下)中ケース(上)高ケース
写真中上:大ケースでマウスがダッシュ
写真中下:パイプの三叉路で大渋滞
写真下:ケースの連結口
〔井の頭自然文化園動物解説員 馬島洋〕
(2011年05月13日)
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