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ニホンカナヘビの恋の季節
 └─2011/05/13

 井の頭自然文化園分園は周りを井の頭池に囲まれているため、展示生物以外にもさまざまな生き物が観察できます。なかでも最近活発に行動を始めたのがニホンカナヘビです。

 名前に「ヘビ」とついていますがトカゲのなかまです。トカゲなのになぜヘビと名付けられたのかは諸説があり一言でいえませんが、カナヘビには足があるばかりでなく、瞼や耳穴など、トカゲにあってヘビにないものが備わっています。

 ニホンカナヘビと非常に姿かたちが似ているものにニホントカゲがいて、勘違いされることが多いのですが、カナヘビは皮膚に艶がなく、尾が相対的に長いことでトカゲと区別できます。人家の周りの草地でも良く見られ、分園内ではカモのケージ前にあるちょっとした草むらなど、いたるところでチョロチョロと動く姿を見ることができます。

 さて先日、ニホンカナヘビの珍しい光景に出くわしました。分園事務所脇の垣根の下で2尾のカナヘビが絡み合っていたので、よく見ると、1尾のカナヘビが別のカナヘビのお腹に噛みついています。縄張り争いよるけんかでしょうか? じつは、恋の季節(繁殖の時期)を迎えて交尾しているのです。後ろで噛みついているのがオス、もう片方がメスで、このようにオスがメスの体に噛みついて体を安定させ交尾をします。余りに強く噛みついているので、交尾後のメスにはしばしばオスの歯型が残ってしまうこともあるようです。

 メスはやがて卵を産みます。産み落とされたばかりのころは直径1センチメートルにも満たない卵は、水分を吸って、孵化するころには1.3~1.5センチメートルほどまでに大きくなるようです。

 名前についてもう一つ。ニホンカナヘビは、「ニホン」とついているように日本の固有種です。水分を吸って大きくなる卵は、雨量の多い時期に産み落とされることでもわかるように、日本の気候や環境によく適応してきたといえるでしょう。
 また、森の中のような薄暗い所よりも、湿潤であれば草地など比較的開放的な環境を好む傾向があるため、里山ばかりでなく井の頭公園のような水辺と適度な茂みがある公園でもよく見られるものと思われます。

 最近の井の頭池では、ミシシッピーアカミミガメやブラックバスなど外来生物が幅を利かせていますが、ニホンカナヘビのような在来種が住める環境を今後とも維持したいものです。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 池田正人〕

(2011年05月13日)



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