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オオハクチョウの巣作り
 └─2011/04/29

 井の頭自然文化園分園の中門を入ると、すぐに水路にかかる橋があり、その右手にオオハクチョウ2羽が飼育されています。この2羽はつがいで、2011年4月18日から巣作りを始めました。

 巣は2本の大きな木の根元に作られているので、橋からでは見えにくいのですが、橋を渡って右側にあるベンチ付近からなら巣のあるところがわかります。 巣の直径は50~60センチメートル位で、周囲の広葉樹の落ち葉や枝を集めて作らていて、真中は卵を温めやすいように少しくぼんでいます。

 巣作りの翌週は、巣材になる広葉樹の葉や小枝が不足してきたようで、オスが近くの木の葉や枝をむしり取って巣を補修しています。メスは巣の上で座って卵を温めるポーズをとることが多くなっています。

 2羽とも繁殖期を迎え、外敵に対して攻撃的になり、飼育係が裏からそっと巣をのぞこうとしただけで翼を広げて威嚇のポーズをとります。

 ところでオオハクチョウは渡り鳥で、冬に北日本や日本海側を中心に飛来し、東京近郊では茨城県の牛久沼が知られています。そして春になると、シベリアなど高緯度地方に渡って行き繁殖をします。このころの繁殖地は、白夜に代表されるように、日中の時間が非常に長くなります。そのためハクチョウの人工育雛を試みるときは、夜間もある程度点灯して日長をコントロールする必要があります。

 今回巣作りしたメスは、4月26日までに4つの卵を産みました。人工育雛を試みようと採卵しましたが、このつがいはやや老齢なため、繁殖に適した卵を産むことは難しかったようです。 分園では、この2羽のほかにもう一つがいをハクチョウ水路で飼育しています。このつがいはやや若いので、小屋の中に人工的に巣を作り産卵させるようにしています。 この時期、朝の静けさの中、井の頭池に響き渡る「コホーコホー」という鳴き声は、じつは繁殖期を迎えたこれら4羽のハクチョウたちの愛の囁きなのです。

写真上:巣があるあたりの場所
写真中:オオハクチョウと巣
写真下:巣を守るメス(後方)と巣作りに余念がないオス

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 池田正人〕

(2011年04月29日)



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