井の頭自然文化園の水生物館は、井の頭池のほとりにあります。井の頭池は、周囲の大部分が垂直な護岸によって覆われており、水深は約1メートルで浅瀬がほとんどありません。1年をとおして濁っていることもあり、太陽の光が水底まで十分に届かず、水生植物が育つ環境にはありません。
水生物館では特設展示「井の頭池から学ぶこと」を2011年2月6日まで開催し、井の頭池の現状や問題点を取り上げてきました。その中で、水生植物を使った実験水槽を作り、水生植物の水質浄化能力が一目でわかるような展示もおこないました。
今回、2010年に引き続き、井の頭池をかつての水がきれいで生き物の豊かな池に戻すため、水生物館のテラスに面した池の部分に浅瀬を作りました。作業にあたっては、池を管理する西部公園緑地事務所の協力も得ています。
浅瀬は、水底部分に割栗石(わりぐりいし:直径20センチメートルほどの石)をたくさん敷いた土台を作り、流出しないような処置をしてから園内の泥を入れ、水深3~5センチメートルになるようにしました。水底に敷いた石にはたくさんの隙間ができ、エビや小さな魚が隠れ家として利用できるようになっています。
また、浅瀬部分には、園内の水路に生えているスゲのなかまや、井の頭池に埋もれていた未発芽の種子(シードバンク)から育てたサジオモダカなどを徐徐に植えていく予定です。
水生植物の生えた浅瀬は、魚や水生昆虫だけでなく、鳥やカメのなかまも利用するでしょう。このような浅瀬を作ることによって、池の景観をよくするだけでなく、水質浄化や多様な生物が増えていくことを期待しています。
水生物館では定期的に生物調査を実施して浅瀬の効果を確認しています。井の頭自然文化園の取り組みはまだまだ始まったばかりです。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 中村浩司〕
(2011年02月11日)
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