井の頭自然文化園の熱帯鳥温室は、おもに熱帯地方の鳥を飼育展示しています。とくに中央の大温室では、カラフルな鳥たちが飛び交う姿を、ガラスや檻で隔てずに園路から直接観察することができます。この大温室内で、2010年7月5日にパラワンコクジャクのひなが1羽孵化し、現在もすくすくと成長しています。
パラワンコクジャクは、フィリピンのパラワン島にのみ生息する小型のクジャクのなかまです。オスはきれいなメタリックブルーの羽をもち、繁殖期には目玉もようのある尾羽と上尾筒という飾り羽を広げてメスに求愛します。一方、メスは全身のほとんどが茶色の羽でおおわれていて、オスに比べると地味な色をしています。
生まれたばかりのころ、パラワンコクジャクのひなは母鳥のお腹に隠れていて、移動するときも常に一緒。母鳥も子どものことを常に気にかけていて、ほかの鳥が近づこうものなら子どもを守ろうと一生懸命威嚇します。うっかりひなに近づいてしまった鳥の中には、温室の中をグルグルと追いまわされてしまう個体もあります。そのときの母鳥の迫力には鳥たちだけでなく飼育係もタジタジで、まさに「母は強し!」ですね。
小さいころのひなは餌を1つ1つ口まで運んでもらっていましたが、3か月たった今では体も大きくなり、150センチメートルほどの高さの餌台に飛び乗って、自分ひとりで餌を食べられるようになりました。
最近はほかの鳥たちと一緒に食事したり、父親も加えた親子3羽で大好きなミールワームをついばんでいます。パラワンコクジャク親子の仲むつまじい姿とひなの成長のようすをあたたかく見守ってください。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 山口慶〕
(2010年10月01日)
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