井の頭自然文化園分園のオシドリ展示場では、2010年6月に入ってやっと孵化ラッシュが始まりました。
6月10日に3羽、12日に6羽、14日に2羽と、昨年に比べ数も少なく、遅い孵化です。昨年は5月29日に初めての孵化が見られましたが、今年はなかなか孵らず、担当者をヤキモキさせていました。
また、巣箱の外に放棄される卵も去年に比べて増えました(鳥は孵らないと判断した卵は放棄することがあります)。おそらく、4月と5月に気温の変動が大きい日が続いたことが原因のひとつではないかと考えられます。
孵化を確認し、今年も来園者の方に愛らしいひなの姿をごらんいただけるとホッと胸をなでおろしていたのですが、ちょっと困ったことが起きてしまいました。10日に孵った3羽のようすがおかしいのです。
ふつうなら母鳥について歩くのですが、オスのあとを歩いたり、母鳥についていったかと思うと、突かれて追われたりした結果、親とはぐれてしまったようなのです。母子の認識がうまくできなかったのかもしれません。
ひなはしきりに鳴いて歩き回っていましたが、母鳥はいっこうに現れず、ひなは疲れて座り込んでしまいました。まだ子育てに慣れていない新米のメス親だったのかもしれません。いくら展示場の中とはいえ、親からの保護なしではひなも生きていけないので、人工育雛に切り替えることにしました。
6月12日に孵化した6羽は、巣箱から出た当初、無事に親の世話を受けており、ひなも親の後をついて歩いていたようです。しかし、6月14日にはひなだけでいるところが見られるようになり、6羽のうち2羽が死亡したため、やはり人工育雛に切り替えました。
6月14日に孵化した2羽は、朝、雨に打たれ、全身びしょぬれになって震えているところを発見しました。急いで体をドライヤーで乾かすと、元気になったので、他のひなたちがいる育雛箱へ移しました。
今は、どのひなも餌をもりもり食べています。展示場には抱卵中の巣箱がいくつかあるので、これからも孵化が見られそうです。今度こそ、親がしっかり子育てしているようすをごらんいただこうと思っています。
写真:たくさんのひなで賑わうオシドリ展示場(2009年)
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 川手美咲〕
(2010年06月18日)
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