カエルやサンショウウオなどの両生類は、日本国内はもちろん、世界中で減少が顕著で、絶滅が心配される種がどんどん増えてきています。井の頭自然文化園では、東京産両生類の飼育下での飼育繁殖技術の研究に取り組み、野外からの採集にたよることなく展示を維持し、保全活動を続けていけるように努力しています。
井の頭自然文化園では、累代飼育に成功したツチガエル(
ニュース)に続き、トウキョウサンショウウオとニホンアカガエルの繁殖にも成功しました。
トウキョウサンショウウオは2年連続の繁殖成功です。昨年(2008年)と同様、冬に屋外のビニールハウスに移動させ、0℃近い「寒い冬」を経験させたことが繁殖成功の大きな要因だと思われ、あらためてその重要性が確認されました。2009年2月24日に屋外のビニールハウス内水槽で見つかった卵嚢は、今まで飼育下で得られた卵嚢の中では、もっとも正常に近い外観でした。卵嚢の中の8割以上の卵で発生が進み、3月27日から孵化が始まりました。一部は他の水族館へ分譲し、現在全長4センチ、27個体の幼生を飼育中です(非公開)。
ニホンアカガエルの繁殖は、井の頭自然文化園では初めてです。トウキョウサンショウウオと同様、屋外のビニールハウス内で「寒い冬」を経験させたグループが2009年2月15日にきれいな卵塊を産み、3月7日に孵化し始めました。現在はほぼ変態を終えて上陸したばかりで、1~2センチの子ガエルを30個体ほど飼育しています。一部は特設展示「カエルの自慢話、カエルのぼやき」で展示しています。
写真上:ニホンアカガエルの子ガエル
写真下:トウキョウサンショウウオ
孵化後約60日の幼生
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕
(2009年06月12日)