ツチガエルは、北海道から九州などの平地から山地にかけて広く分布しているカエルです。沼や川のほか、田んぼにもふつうに見られたカエルでしたが、最近の田んぼではめっきり少なくなってしまいました。
むかしの田んぼは冬でも湿っていて、どこかに水たまりがあったものですが、最近の田んぼは冬になると乾燥していますし、水路はコンクリートになってしまいました。そのため、オタマジャクシのまま冬を越す個体が少なくなり、変わった生態のツチガエルはくらしにくくなってきたようです。東京都の保護上重要な野生生物種(レッドデータブック)にも名前が載っています。
井の頭自然文化園は、2007年に動物園水族館で初めてツチガエルの繁殖に成功しました。繁殖したオタマジャクシは無事成長し、カエルになって、2008年の秋には産卵を始めました。現在順調にオタマジャクシが 100尾ほど育っていて、一部は親ガエルとともに展示しています。
初めて産卵したとき、親ガエルを別の水槽へ移動させたことがきっかけで産卵したように思われました。その後も産卵の準備ができたと思われる雌雄を温度の高い別の水槽へ移動させたり、温度が急に上がったりしたときに産卵したことから、数℃程度の温度上昇が産卵の引き金になっているのではないかと考えています。
親ガエルにも子ガエルにも生きたコオロギだけを餌として与えています。カエルのために養殖しているフタホシコオロギにビタミンやミネラルを食べさせて栄養を強化したことも繁殖成功につながったのだと思います。
今後も飼育下で繁殖させ続けることで、ツチガエルの保全を進めたいと思っています。
写真上:ツチガエルの抱接
写真中:卵塊
写真下:孵化後約半年のオタマジャクシ
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕
(2009年03月27日)
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