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ミズグモの結婚用の部屋
 └─2009/01/30
ミズグモの結婚用の部屋
 └─井の頭 2009/01/30
 わかっているだけでも3万種以上が知られるクモの中で、ミズグモはただ1種、水中生活に適応して一生を水中で過ごすことができる変わったクモです。水中の水草などに糸を張りめぐらして、そこに空気の粒を水面から繰り返し持ち運んで、空気部屋(巣)を造ってくらしています。

 ふだんメスは自分で造った巣の中にとどまっていますが、オスは出歩いていることが多く、食事などの必要なとき以外にはあまり巣を利用しません。そして、ふつうはオスとメスが同じ巣にいっしょにいることはありません。

 ヨーロッパのミズグモでは、メスの巣のとなりにオスが結婚用の巣(交尾控室)を造り、巣をつなげて交尾する、というとても興味深い行動が報告されています。ぜひともそんな状況をこの目で見てみたいとずっと思っていますが、飼育を始めて3年以上にもなり、産卵は何度も観察しましたが、交尾行動を見たことはありませんし、ふたつ並んだオスメスの巣を見たこともありませんでした。

 そのかわり、メスが造った立派な巣(産卵用の巣)にオスが入り込んでいるときがあります(写真上)。早ければ、その後1日~数日で産卵が始まります(写真下)。このことから、雌雄の同居と産卵に何らかの関係があるのではないかと考えていますが、何をしているのか、どんな意味があるのかは今のところわかっていません。

 結婚用の巣(交尾控室)を造るほかのクモの場合では、成熟したオスが、成熟直前のメスの巣のすぐ隣に自分の巣(結婚用の部屋)を造り、交尾できるようになるのを待っています。日本のミズグモでも同じような状況が整えば、結婚用の部屋が観察できるかも知れません。うまく観察できたら、みなさんにもぜひ紹介したいと思います。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕

※ミズグモ展示のきっかけとなったアニメーション映画「水グモもんもん」(2006年、宮崎駿監督作品)が、ふたたび井の頭自然文化園の近くにある三鷹の森ジブリ美術館で上映されます。ミズグモが主人公の映画です。上映期間は2009年2月1日(日)から2月28日(土)、上映時間は毎時間15分、35分、55分、最終上映は17:35です。

(2009年01月30日)



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