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モウコノウマの「レオ」
 └─多摩  2010/10/01

 多摩動物公園では現在5頭のモウコノウマファミリーがくらしています。先日の敬老の日には、このファミリーの最長老である今年(2010年)27歳になったオスの「レオ」も長寿動物として紹介されました。今回はこのレオの近況をお話ししましょう。

 私が担当になったのは今年4月ですが、ほかの4頭はもうだいぶ綺麗に換毛がすすんでいたのに、老齢のレオはうまく毛が生え変わらず、ボサボサの状態でした。

 競走馬や乗馬クラブなどの馬とは違い、モウコノウマは野生馬なので人との接触があまり得意ではありません。ですが、年齢を重ねたレオはとても穏やかで、人に興味を示してきます。初めのうち、私はそんなレオの気持ちが理解できず、「家畜化されていない馬は危険」と思い、距離をとって接していました。

 けれど暑い季節を迎えようとしているのに、いっこうに古い毛が抜けずにいる姿を見て、ブラッシングをしてみようと思いました。とはいっても最初は柵越しです。柵を隔てて安全を保ちながら、寄ってくるレオの身体をブラッシングしました。するとレオは気持ちよさそうにじっとしていました。それどころか、ブラッシングをやめると前足で扉をガンガンけって「もっとやってくれ」と催促をしてくるのです。

 お互いの信頼関係ができてからは、レオの隣に立ってできるようになり、なかなか抜けなかった毛が一気にスッキリし、毛づやも良くなりました。

 ところがここ数日ぐっと気温が下がって一気に秋の気配が訪れてくると、レオの毛があっという間にボサボサになりました。ブラッシングをするとごそっと古い毛が抜け落ちました。

 レオの体に一瞬にして「冬モード」のスイッチが入ったのでしょう、冬に向けての換毛が始まったのです。そんなレオに自然で生きる野生動物の一端を垣間見た思いでした。

 これから寒さが厳しくなる季節を迎えます。「好々爺」のように穏やかなレオに充分なケアをして、快適に過ごしてもらおうと思っています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤麻里子〕

(2010年10月01日)



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