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アジアゾウ輸送箱トレーニングの進捗状況
 └─多摩  2016/10/28

 多摩動物公園では新アジアゾウ舎の工事が進んでいます。完成はまだ先ですが、アジアゾウ3頭は引っ越しに向けて輸送箱に慣らすトレーニングを始めています。

 ふだん開けた場所で過ごしているゾウにとって、狭い箱に入り、外部の音などに驚かず過ごすことは、すぐできることではありません。また、箱の中でゾウがケガをしないよう、肢を箱に鎖で繋ぐ必要があります。そこで、さまざまな環境に慣れさせて、箱の中が安心できる場所になるようトレーニングを進めていきます。

 今年(2016年)3月、鉄製の箱を運動場に設置しました。箱の存在に慣れた7月からトレーニングを開始しました。すでに箱に入ることには慣れ、現在、音に慣れることと係留のトレーニングを中心におこなっています。音のトレーニングは、ゾウが入った箱を外から叩いたり、鎖のあたる音を聞かせたりします。係留のトレーニングは、「鎖を繋ぐための窓」から肢を出させる訓練です。

 トレーニングの反応には3頭の個性が見られます。

◎ヴィドゥラ(オス、9歳)

ヴィドラ

 当初ヴィドゥラは、箱の入口の段差を気にして入るのを嫌がりましたが、段差を土で埋めるとすぐに入り、トレーニングもできるようになりました。まだ、後方からの音が苦手ですが、トレーニングは少しずつ進んでいます。

◎アマラ(メス、12歳)

アマラ

 アマラは最初からすぐに箱に入りましたが、トレーニングを始めると中で耳を広げるなど、緊張したようすを見せ、トレーニングが終わると寝室まで駆け戻っていました。今でも多少緊張は見られますが、少しずつ慣れ、部屋にもゆっくり戻るようになってきています。引き続き慎重にトレーニングを進めています。

◎アヌーラ(オス、63歳)

アヌーラ

 国内最高齢のアヌーラは、3頭中で最も落ち着いています。多少の音に動じることなく、肢を出すことも躊躇しませんでした。他個体と同居していないアヌーラは1頭で運動場にいるため、いつでも箱に入れるようにしています。

 今後はそれぞれの進捗状況に合わせ、さまざまな音や箱の中での係留、入口を馬栓棒(出入りを制限するために利用する直径10センチ程度の筒状の棒)で閉めるなど、輸送当日の環境に近づけていく予定です。ゾウと職員がともに安心して引っ越しができるよう、じっくりと準備を進めています。

 トレーニングは不定期に実施していますが、アヌーラは開園前、アマラとヴィドゥラは13:20~14:00頃におこなっています。トレーニング中はゾウがご覧になれないことがありますのでご了承ください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 藤本卓也〕

(2016年10月28日)


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