みなさんはハエトリグモを知っていますか? 最近テレビなどで外国の美しい種類が取り上げられたり、書籍が発行されたりして、以前よりも知名度はあがったのではないかと思います。
ハエトリグモは家の中にも生息していることがある、網を張らない徘徊性の小さなクモのなかまです。あちこち歩き回っては小さな昆虫を見つけると飛びかかって捕食します。多摩動物公園昆虫生態園のチョウ飼育室では、おもにチャスジハエトリとアダンソンハエトリという2種のハエトリグモが生息しています。

捕食中のチャスジハエトリグモ(メス)
ハエトリグモのいちばんの特徴は、大きな目です。網を張らずにこの目で獲物を探します。写真を撮っていると、「あ、今目があった!」と感じることもよくあります。この大きな目のおかげで、他のクモよりも愛着のわきやすい種類ではないかと思います。

正面から見たチャスジハエトリグモ(オス)
さて、昆虫生態園のチョウ飼育室ではそんなハエトリグモが常時数匹くらしていますが、先日、チャスジハエトリのオスとメスが出会ったところを見つけました。
求愛シーンが見られるかも知れない!とカメラを用意したところ、予想通り「求愛ダンス」をビデオにおさめることができました。オスは、メスとの距離を測りながらじわじわと近づいていきます。メスはそんなオスをジーっと観察しています。
【動画:チャスジハエトリグモの求愛ダンス。交尾を無事終えられたのか、一目散に逃げ出す】
オスの長い第1脚が非常に印象的で、これを目一杯広げながらゆらゆらとメスに近づき、最後は交尾を無事終えられたのか、一目散に逃げ出します。カマキリと同じで、クモも交尾の際にオスがメスに食べられてしまうことがあるからなのですが、この逃げっぷりは見事で、つい笑ってしまいました。

メスに食べられるチャスジハエトリグモのオス
では、オスどうしが出会ったらどうなるかというと……下の動画をご覧ください。まるで相撲のようにがっぷり四つに組んで闘います。ちなみに、実力の差が大きいと、組み合うことなく、第1脚の見せ合いだけで決着がつくこともあります。
【動画:がっぷり四つに組むチャスジハエトリグモのオス2匹】
クモといえば嫌われ者の代名詞のようにも使われがちですが、ハエトリグモはハエやカを食べてくれる益虫でもあります。身近で見つけたら、ぜひ目が合うまでじっくり観察してみてください。新しい魅力に気がつくかもしれません。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田菜実〕
(2016年10月21日)