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ニホンカモシカ「ナギ」を見るタイミング
 └─上野  2016/10/14

 上野動物園東園のシカ舎には、エゾシカのオス「キュー」とニホンカモシカのオス「ナギ」をいっしょに展示しています。

 運動場には「崖」がありますが、日中はエゾシカもニホンカモシカも崖下の広いスペースを共有しています。ただし、崖の上にアクセスできるのは、ニホンカモシカのナギだけです。

 野生のカモシカは山岳地帯に生息しており、ニホンカモシカのナギも崖上で多くの時間を過ごします。しかし、崖上にいるナギは、体の色が岩と似ていて見つけづらかったり、崖の上の奥の見えにくい場所にいると来園者の方から「カモシカはどこ?」と尋ねられたりすることがあります。

崖の途中で休むナギ
眼下腺をこすりつけてマーキング

 そこで、開園中はナギが死角になる場所になるべく立ち入らない工夫をしているのですが、ナギはまた別の死角を見つけてしまい、なかなかこちらの思惑どおりにはいきません。まだまだ展示改良の余地があります。

 そこで、ニホンカモシカがよく見られるタイミングをお伝えしましょう。それは……飼育係が運動場に出入りする時です。午前の約20~30分間(日によって時間は異なります)と夕方の16時30分以降、清掃と給餌のために、飼育係が運動場に現れます。すると、かなりの確率でナギが崖下におりてきます。


岩場での採食のようす

 「俺の土地に何の用だ!」と言わんばかりに、目の下の「眼下腺」をいろいろな所にすりつけたり、「ご飯待ってましたー!」とでも思っているかのように、えさを持つ私に熱い視線を投げかけてきます。タイミングが合えば、近い距離でナギと飼育係との関係を見ることができるはずです。

 また、えさの枝に角や体をこすりつけたり、急な崖を一気に駆け上がったりするなど、ナギにはさまざまな行動が見られますが、私がオススメしたいのが、崖ギリギリに設置した枝葉を採食するようすです。人にはちゃんと立てないような不安定な岩場にしっかりと立ち、小さな蹄で岩場をしっかり捉えて体を支え、ぐーっと体を伸ばし、枝先の葉を食べる姿ははとても凛々しく見えます。

 せっかく来ていただいたのに見えづらい場所にいることもあるかもしれません。でもあきらめず、他の動物たちを見た後でまた足を運んでください。ナギの雄姿が見られるかもしれません!

〔上野動物園東園飼育展示係 德田雪絵〕

(2016年10月14日)


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