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イノシシ「キントン」と「クロマメ」の好きなもの
 └─多摩  2016/09/09

 日本の野山にすむイノシシは、四季折々のものを食べてくらしています。文献には「植物を中心とした雑食性で、おもに植物の葉や根、地下茎、果実や種子などを採食する。とくにタケノコや堅果類を好む。昆虫やミミズ等の小動物も採食するが、動物質の利用比率は低い」とあります。

 多摩動物公園は木々に囲まれ、園内に里山の自然が残っています。そこで、園内で季節ごとにとれる植物などをイノシシのメス2頭「キントン」と「クロマメ」に与えてみました。

 春はタケノコ。与えるとすぐに食べました。やはりタケノコは好きなようです。人間では食べないような、いわゆる竹の状態になったものでも、バリバリと食べていました。


タケノコをたべる「クロマメ」

 初夏はドクダミとフキ。ドクダミはよく食べ、葉はもちろんのこと、茎や根も食べていました。フキは少し葉をかじったもののあまり好みではないようでした。

 晩夏はヤブガラシやクズ。茎は食べないものの、葉だけをよく食べ、キントンよりもクロマメのほうが好きなようでした。また、運動場に落ちていたセミをクロマメがパクリとためらいなく食べているのを見かけました。なるほど、昆虫を食べると本に書いてあったとおり、セミも食べるんだなと思いました。そこで、キントンにもセミを差し出してみたのですが、キントンは驚いて逃げてしまい、セミを食べることはありませんでした。

 また、園内でとれた自然のものではありませんが、野生で食べている木の根などと似ているのではないかと思い、ゴボウを与えてみました。しかし、2頭とも少しかじった程度で、喜んではくれませんでした。

メロンを食べる「キントン」
カボチャを食べる「クロマメ」

 一方、園内で育てられていたハロウィーン用のカボチャを与えてみたところ、30キロ以上あったカボチャを2頭は数日で食べ終わってしまいました。とくに、最初はその大きさに驚いて近づけなかったクロマメですが、一度食べ始めたらすごい勢いで食べるようになりました。また、寄贈していただいた物やイベントの残り物の人間用のモモ、カキ、ブドウ、メロンなどは2頭ともためらいなくすぐに食べていました。やはり人間の食べるものは甘くておいしいのでしょう。

 今は園内でドングリが落ちる季節ですが、イノシシたちも運動場に落ちたコナラやクヌギのドングリを食べています。野生では今回与えてみたもの以外にも、イノシシはたくさんのものを食べて生きています。イノシシの食べるものを通じて、日本の山の実りの豊かさを少しでも感じていただけるよう、これからも与えるえさに工夫をしていきたいと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕

(2016年10月14日)


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