夏真っ盛りの2016年8月、多摩動物公園では奇妙な光景が見られます。園路に葉が何枚かついたコナラのドングリがいくつも落ちているのです。ドングリはまだ青く、自然に落ちてくるには早すぎます。風か、誰かのいたずらでしょうか?
これはハイイロチョッキリというゾウムシのなかまのしわざです。ハイイロチョッキリは、ドングリに穴を開けて卵を産み付けます。そして枝先ごと地面に切り落とすのです。その切り口は剪定バサミで切ったかのように見事なもの。卵から孵化した幼虫は、ドングリの中身を食べて成長します。
さてそのドングリですが、ちょっとした悩みがあります。ふつうなら森や林の地面に落ちますが、園路沿いに生えている木から落ちたドングリは、人や車が通る園路に落ちてしまうのです。あちこちで、つぶれたドングリが見られます。なにせ、道行く車も避けて通ってはいられないほどあちこちに落ちています。
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園路に落ちている葉のついたドングリ | ハイイロチョッキリが産卵のために開けた穴 |
せっかく卵を産みつけたドングリがこれでは忍びないと、歩く先に落ちているドングリを拾っては園路脇に投げ込む毎日です。でも、ドングリを拾いながら歩いてふと振り返ると、またドングリが降ってきていたり……。ハイイロチョッキリの熱心な仕事ぶりには感心するばかりです。
みなさんもこの時期、道に落ちている葉つきの青いドングリを見つけたら、そっと脇によけてあげてください。もしかしたら、ハイイロチョッキリからの「恩返し」がくるかもしれませんよ。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕
(2016年09月02日)