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最後のドール「エリ」が死亡しました
 └─上野  2016/08/31

 上野動物園で現在アメリカバクが展示されている施設は1996年に作られ、1996年4月から2015年2月までドールを公開していました。ドールはアカオオカミとも呼ばれ、野生では群れで生活するイヌ科の動物です。

 ドールは飼育スペースの問題などから新しい個体を導入することがむずかしくなり、2015年度末にはアメリカバクの施設が老朽化のため取り壊されることが決まりました。そのバクの移動先として選ばれたのがドール舎です。ドール舎を改修し、バクを展示をするために、1頭となったドールのメス「エリ」は2015年2月、非公開エリアに移しました。


最後のドール「エリ」

 エリは2002年3月9日によこはまズーラシアで生まれました。2003年2月11日にきょうだいであるオスの「キュウ」「カーン」「ダン」、そしてメスの「ミコ」とともに来園しました。

 これらきょうだいの死亡後、2014年9月に上野動物園のドールはエリ1頭となりました。2015年春頃には耳が聞こえにくくなっており、夏頃から徐々に痩せ始め、食欲も減少してきました。

 最近数か月は寝ていることが多く、耳が悪いことが幸いしたのか、飼育係の作業中も熟睡していました。5月頃から急激に食べる量が減り、7月10日からまったくえさを食べず、25日には立つことができなくなり、26日の17時頃に死亡しました。解剖の結果、全身数か所に腫瘍が見られ、えさを食べなくなったための衰弱死でした。

 上野動物園では1978年からドールの飼育を始め、今まで16頭を飼育してきましたが、14年4か月生きたエリは2番目に長生きでした。

 私が園路側からバクの観察をしていると、来園者の方からドールのことを聞かれることがあります。群れでプールに飛び込んだり、展示場内を疾走したり、日向で寝ていたり、イヌ科ならではの行動が印象に残っている方も多いようです。上野動物園でのドールの飼育は終わりましたが、多くの方が覚えていてくださるのは飼育担当としてうれしいかぎりです。

〔上野動物園飼育展示係 廣瀬格〕

(2016年08月31日)


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