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水辺にいないホタル、オオシママドボタル
 └─多摩  2016/08/19

 みなさんはホタルのなかまが日本に何種いるかごぞんじでしょうか? 日本には約50種のホタルが生息しており、そのほとんどが幼虫期を陸上で過ごします。ゲンジボタルやヘイケボタルのように幼虫期を水中で過ごすホタルは、クメジマボタルを加えて日本に3種のみが生息しており、世界的にみても数種しかいません。

 一方、多数知られる陸生ホタルのうち、多摩動物公園ではオオシママドボタルを飼育展示しています。オオシママドボタルは沖縄県の西表島、石垣島、竹富島、黒島に生息しており、現地では10月上旬〜1月頃成虫になります。成虫のオスとメスは外見が異なり、メスは翅が退化していて飛ぶことができません。メスは光と匂いでオスを誘い、交尾します。


オオシママドボタルの成虫(左:オス、右:メス)。なお、成虫は展示していません。

 幼虫は体の後ろの方に「尾脚」とよばれる吸盤のような構造をもっており、6本の脚と尾脚を使って歩行します。現地で観察したときは、尾脚をうまく使って草などを登っている姿が印象的でした。こうした姿をご覧いただくために、展示場には植物を植えています。夜行性なので地表の物陰に隠れていることが多いのですが、ときおり葉の裏で休息している幼虫の姿を見かけます。ぜひ探してみてください。

葉の裏で休む幼虫
カタツムリを食べる幼虫

 幼虫はカタツムリを食べて成長します。殻のあるカタツムリをどのようにして食べるかというと、殻から出ている頭などの部分に噛みつき、消化液で溶かしながら食べるのです。このようすをご覧いただくため、数日おきにカタツムリを水槽に入れていますが、幼虫は夜間活動するのでなかなかお見せすることができません。しかし、朝方に食べ始めた幼虫が開園時間になってもカタツムリに頭を差し込んでいることがときおりあります。

 はたして今日はカタツムリを食べているでしょうか? 昆虫生態園へお越しの際は、そうした期待を胸にオオシママドボタルの水槽をのぞいてみてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古橋保志〕

(2016年08月19日)


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