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オランウータン「モリー」のスカイウォーク
 ──多摩 2006/12/01

 昨年(2005年)11月9日に上野動物園から多摩動物公園にやってきたオランウータンのモリー(推定54歳、メス)は、当初、第3放飼場に1頭だけで出ていましたが、室内ではジュリー(41歳、メス)が見える部屋ですごし、移動用通路などではジプシー(推定50歳、メス)とオリ越しに見合いをするチャンスもありました。

 モリーも多摩に来てすでに1年。かなり慣れてきたようなので、広い第1放飼場や、室内の第2放飼場にも出して、生活範囲を広げるように心がけてきました。2006年11月15日には、第1放飼場でジプシーと初めていっしょにしてみました。

 モリーは左目が不自由で、右目も指を使って自分でまぶたを持ちあげないと見えないのですが、ふだんから動きは速く、高いところにあるロープでもスイスイと渡るようになりました。遠くにいるジプシーに近づいていくスピードときたら、若い個体も顔まけです。ジプシーがモリーから急いで逃げようとするので、まるで鬼ごっこのような状態になってしまいます。

 第1放飼場のゆれるロープが渡れるのなら、スカイウォーク(高さ約15メートル、長さ約 150メートル)のしっかりしたロープぐらい簡単だろう──そう考え、11月23日にモリー1頭にスカイウォークをさせてみました(スカイウォークは11月16日から中止していますが、気温などの状況に応じておこなっています)。

 午後1時30分、さっそく最初のタワーのてっぺんまで登ったモリーは、しばらくまわりの景色を楽しんでいるようすでしたが、ロープをさわってようすを確かめ、第2タワーに向かって渡り始めました。途中で止まって、片目でまわりを確認しつつ進んでいきます。ゆっくりと進んで第7タワーまでくると、ロープを離れて台の上に座りこみ、その後、戻るようなそぶりも見せましたが、午後3時をすぎて、最後の第9タワーに到着。

 最後のタワーは、植物の生える放飼場(飛び地)へと降りていけるようになっています。ところが、なかなか降りてこないので私がモリーの名前を呼ぶと、ゆっくりと降りてきました。子どものころから50年以上も草木の感触を味わっていなかっただろうモリーがのんびりと飛び地で横になっているすがたを目にして、モリーを20代のころから知っている私は感無量でした。

 4時をすぎてモリーは飛び地にある寝室に入り、不安なようすも見せずに、すぐ夕食を手をつけ、その後はゴロンと横になって休んでいました。

 その後3日間、モリーは飛び地と寝室で生活を続け、いろんな植物を観察したり、草を食べてみたり、とても楽しそうに見えました。枝を折ってみたり、樹木を触ったり、好奇心も旺盛です。

 すっかり飛び地が気に入ってしまったモリーですが、飛び地には冷暖房施設がありません。この時期は最低気温が6℃にまで下がるため、11月26日には輸送箱に入ってもらい、午後3時ごろ、軽トラックでオランウータン舎に運びました。4日ぶりの自室でモリーはいつもどおりすぐ餌を食べ、床暖房のきいた部屋のベッドで、イビキをかきながら寝てしまいました。元気そうなモリーに一安心です。

〔多摩動物公園飼育展示課 黒鳥英俊〕

写真は第3放飼場のモリー(2006年1月17日)

(2006年12月1日)



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