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チリの高級魚、コングリオ登場!──葛西 2005/09/02

 このたび、「深海の生物」のコーナーに「コングリオ」という魚が登場しました。コングリオ、なかなか響きのよい名前ですが、みなさんにはまったくなじみがない名前でしょう。とりあえずどんな顔をしているのか、のぞいてみましょう。

 暗い水槽の中。黒くて、丸太のように太く長~い魚が横たわっています。ガラスのように光る目、大きな口、丸いうちわのような胸びれ。ときおり、アゴの下からピロピロと出て水槽の底をさぐる白いヒゲ。巨大なナマズのようなアナゴのような姿形をしています。じつは名前のコングリオは、この魚の故郷、チリでは「アナゴ」という意味。しかし、コングリオはアナゴではなくアシロという魚のなかまで、水深2~300メートルの海底にくらし、体長は1メートルちかくにもなります。

 さて、ところでこの魚、顔に似合わずとてもおいしい魚なのです。しまった白身の肉は淡白で、フライやソテーにすると美味。チリの市場にいくと、写真のように大きなコングリオがたくさん並べられ、人気のほどがうかがえます。

 そして、おどろくことに、この地球の反対側でくらす魚を、みなさんも食べたことがあるかもしれないのです。

 コングリオもふくめて大型になるアシロのなかまは、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカなど、南半球に5種類が生息しており、いずれも重要水産種として、底びき網やはえ縄などで漁獲されています。そして、それらは「キング」という商品名で日本にも輸入されているのです。
 しかし、切り身になり、粕漬けとしてスーパーに出回ったり、料理屋でチリ鍋の材料などに使われるため、私たちには、すがたも名前もなじみがありません。

 名だたる魚食国家の日本は、世界中からあらゆる水産物を輸入しています。朝に食べたアジの干物はオランダから来たニシマアジ。お昼のイカ天ぷらはアフリカから来たヨーロッパコウイカ、夕食のシシャモはアイスランドから来たカラフトシシャモ、といったぐあいに、私たちの食卓には、遠い海の生き物が並んでいます。それらの多くは、コングリオのように切り身やすり身となり、冷凍食品や外食産業の総菜に利用されるため、その素性はなかなか見えません。

 さて、コングリオ、そんな風に見てみると、またちがった顔に見えませんか? みなさんも、今日の夕飯の魚がどこから来たのか、ぜひ調べてみてください。

〔東京動物園協会調査係 天野未知〕

(2005年09月02日)



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