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さよなら、アメリカバイソン「グンマ」
 └─上野  2013/10/11

 2013年9月20日、上野動物園のアメリカバイソン「グンマ」(オス、23歳)が老衰のため死亡しました。グンマは、1990年5月19日に群馬サファリパークで生まれ、1993年に来園し20年間飼育されてきました。

 若いころのグンマと、そしてまた今回最後の飼育を務めた担当者と、最期を見届けた副担当者の思い出をお伝えし、追悼の言葉とします。

 若い頃のグンマはやんちゃでした。大きな体で放飼場を夢中で走り回るので、堀に落ちるのではと飼育担当者はいつも心配しながら見守っていました。頭を振って角突きをするのが好きで、丸太をチェーンで吊るした遊具を設置したこともあります。男性2人がやっともてるほどの丸太を、簡単に頭で振りあげ、楽しそうに遊んでいました。

 頑固な面もありましたが、本来は穏やかな性格で、晩年は放飼場に堂々と座ってマイペースに過ごし、やんちゃ盛りのクビワペッカリーのことも受け入れていました。

 大病はしませんでしたが、重い体を支え続けてきた四肢にはかなりの負担がかかっていて、関節炎に悩まされていました。2013年8月下旬に関節炎が悪化し、サプリメントなども用いて治療を続けましたが、9月19日からは立てなくなってしまいました。草食動物にとって立てないことは、野生では肉食獣に狙われる危険が高くなり、飼育下でも床ずれや体重がかかる側の内臓が圧迫されるなど死に繋がる厳しい事態です。

 今後の対応を検討していたころ、短時間ですが1度だけグンマが立ちあがることがありました。「まだ大丈夫だ!」と言わんばかりの立派な立ち姿でした。

 しかし翌朝には、脚に力が入らず、滑り止めマットを敷くなどの手助けをしましたが立てません。それでもグンマは、何度も体を動かして立とうと挑み続けました。その姿を見て、生きたいというグンマの強い意志を感じただ圧倒されるばかりでした。

 体力を消耗したグンマに大好物のリンゴを与えるとすぐに食べました。口からこぼれたリンゴのかけらを口元に近づけてやると、ギロリとこちらを睨み思い切り頭を振り拒絶してきます。まだ頭を振る力があるんだと少し安心した矢先、15時ころグンマは死亡しました。

 最後まで生きることを諦めず、自分の弱さも見せず、堂々と旅立っていったグンマの姿から、野生動物の本能と強さを教えられました。

 グンマの死後、多くの来園者の方から追悼の言葉や献花をいただきました。グンマに代わり御礼申し上げます。

 グンマ、長い間お疲れさま。そして、たくさんの思い出をありがとう。

〔上野動物園東園飼育展示係 猪股康真・宇野なつみ〕

(2013年10月11日)



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