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ランプフィッシュ、3世代を展示中
 └─葛西  2013/03/29

 葛西臨海水族園のニュースではもう何回も登場しておなじみのランプフィッシュ(ランプサッカー)ですが、このたび水族園生まれで3代目となる孫を、親世代、子世代と同時に展示しています。ただし、残念ながら初代の親世代と2代目の子世代はほとんど同じ大きさに育っていて区別がつきません。3代目の孫世代は明らかに小さく、すぐに区別がつきます。

 この孫たちは以前のニュースで紹介した卵が、元気に育ったものです。

「ランプフィッシュの卵を展示しています」(2012年05月11日)

 ランプフィッシュは北大西洋の北部、北米東岸からヨーロッパの西側、イギリス、グリーンランド周辺、展示水槽の表示名となっている北海などの冷たい海に広く分布する魚です。

 以前の記事では、繁殖期にオスがオレンジ色になること、メスは粘着性で直径2〜3ミリの卵の塊を岩などに産みつけオスが保護すること、この卵が着色されてキャビアの代用品として利用されることなどについても紹介しました。

「ランプフィッシュの婚姻色」(2011年12月23日)
「イクメンなランプサッカー」(2010年09月24日)
続・新たな視点で見てみると(8)(2009年02月06日)

 じつはランプフィッシュに限らず、魚類の繁殖と育成には結構な手間がかかります。まず、自然に近い環境で飼育し、親を健康に育てる必要があります。そして繁殖行動を起こし、産卵に成功したら、その中で質の良い受精卵を回収します。その後受精卵は、親や別の魚から隔離しより清浄な環境で飼育します。

 孵化したランプフィッシュの仔魚には、初めは小さな生き餌を与えますが、成長につれて徐々にエビやゴカイのミンチなどを与え飼育します。多数を同じ場所で飼育すると細菌やカビなどによる病気にかかりやすくなるため、なるべく少数に分けて飼育するなどのくふうをし、水槽も1日に何回も掃除するなど、病気の発生がないよう細心の注意を払います。

 今回の展示では、孫世代を親子世代と同じ水槽に入れるときにも気を遣いました。孫の魚たちは明らかに親子世代よりも小さいため、まず水と魚を入れたビニール袋を水槽に浮かべてようすを見ました。すると、大きな親子世代が近寄ってきて、食べ物でも探すようにつつき始めました。すぐに同居させると、小さな孫たちがつつかれて傷ついてしまうかもしれないため、半日ほどそのままにして観察していると、諦めたのか親子世代は近寄ってこなくなりました。そこで孫たちをそっと水槽に放すと、すぐに泳ぎ始め、むしろ大きな親子世代をつつくぐらい元気でした。こうして、親子孫世代と、形も色もそっくりで大きさだけ違う3世代展示が完成しました。

 水族園ではランプフィッシュ以外にも、海洋生物に限らずいろいろな生物の繁殖に取り組んでいます。これは、自然界から生物を集めてくるばかりではなく、大切に飼育して繁殖させ、次の世代を育て、それをまた展示することにより、自然界から野生生物の捕獲を極力抑えられるからです。

 また、培った飼育・繁殖技術は種の保全にも役立てることができます。

 かわいいランプフィッシュの幼魚たちを見て、水族園が種の保全にも取り組んでいることを思い出していただければありがたいと思います。ランプフィッシュは世界の海エリア「北海」水槽でごらんになれます。

写真:まだ小さい孫世代のランプフィッシュ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2013年03月29日)



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