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性転換をする魚、キンギョハナダイ
 └─葛西  2011/07/08

 葛西臨海水族園世界の海エリアの「紅海」水槽で群れているオレンジ色の魚はキンギョハナダイです。紅海を含むインド洋と太平洋の暖かい海域に分布するハタのなかまで、サンゴ礁や岩礁のまわりの潮通しのよい場所に棲んでいます。さて、水槽の中のキンギョハナダイたちを観察していると、オレンジ色に混じって、同じ形なのに赤紫色をした魚が泳いでいます。しかし、飼育係にはこの魚を水槽に入れた覚えがありません。ではいったいどこから現れたのでしょうか?

 この赤紫色の魚は、オスのキンギョハナダイです。キンギョハナダイはメスからオスへ性転換をする魚なので、水槽内にオスが現れることがあります。生まれてから約1年でメスとして成熟し、繁殖に参加できるようになります。

 そして、群れの中のオスがいなくなったり、ほかの群れと合わさって群れのサイズが大きくなったりすることがきっかけで、体の大きなメスがオスに性転換します。性転換にともなって体色がオレンジ色から赤紫色に変わり、さらに背びれの一部が伸びるなどの特徴が現れます。ヒトの性別は生涯変わりませんが、魚の世界で性転換は珍しくないのです。では、性転換にはどんなメリットがあるのでしょうか?

 それは、確実に自分の子孫を多く残せるというメリットです。体が小さいときはメスとして産卵して自分の子孫を確実に残し、成長してまわりのオスに負けないようになったらオスに性転換し、多くのメスとのあいだに自分の子孫を残すという繁殖戦略なのです。

 さて、話をキンギョハナダイに戻しましょう。群れの大きさとオスの数には相関関係があり、1~3割のオスが現れるという研究報告があります。これは水槽の中でも観察できました。

 20尾ほどを飼育していたころは、オスは1尾だけでした。しかし、そこへ約70尾を足したところ、数日後、一部の個体の体色が変わり始めました。性転換が始まったのです。現在、群れの中にはオスが1尾、性転換の途中の個体が2尾、そして性転換を始めたばかりのメスが1尾います。これから何尾のメスが性転換するのか楽しみです。ぜひ、みなさんも性転換のようすを観察してみませんか?

写真上:キンギョハナダイのメス
写真中:キンギョハナダイのオス
写真下:性転換真っ最中のキンギョハナダイ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕

(2011年07月08日)



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