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カニがダンス?
 └─葛西  2011/06/24

 葛西臨海水族園「東京の海」エリアの2階に「カニ水槽」があるのをご存知でしょうか? この水槽はすぐに近寄らず、少し離れて見てみましょう。泥の陸地で何か白いのが動いています。そっと近づいてみてください。ほら、小さなカニがハサミを繰り返し上下に振っています。白く見えるのはカニのハサミです。まるで万歳を繰り返して、ダンスをしているかのようです。このカニの名前は「チゴガ二」といいます。

 チゴガ二は、泥質の干潟でよく見られる、甲羅の幅が1センチメートル弱の小型のカニです。満潮時は巣穴に潜っていますが、干潮になると巣穴から出てきて活動を始めます。
 カニの近くの小さな穴が巣穴で、その周りには砂団子がたくさんあります。大きな砂団子は巣穴から出てくるときに掘った砂の跡で、小さな砂団子は食事をした跡です。餌は砂の表面についた珪藻や砂の中の微小生物です。チゴガ二はハサミを使って砂を口に運び、口の中で餌だけをこし分けて、残りの砂は団子状にして捨てるのです。

 それでは、先ほど観察した「万歳ダンス」はいったい何をやっているのでしょうか? この行動は「ウェイビング」と呼ばれています。ダンスをするのは主にハサミの大きなオスです。そして、このダンスには二つの役割が考えられています。

 一つ目の役割は、縄張りの主張です。カニ同士がお互いにハサミを振り上げることで、自分の縄張りを主張しているのです。
 もう一つの役割は、メスへの求愛行動です。メスがオスに近づくと、ハサミを振り上げるスピードはさらに激しくなります。そんなカニの姿を観察していると「恋愛は努力なしでは成就しない」ことを教えてくれているようです。

 みなさんもぜひ、チゴガニのダンスを見てみてください。ただし、急に水槽をのぞき込むと、カニはびっくりして巣穴に隠れてしまいます。そんな時は3分くらいジッと待っていると、カニが巣穴から少しずつ出てきて、ダンスを披露してくれるはずです。ダンスを見ながら、恋愛について考えてみませんか?

〔葛西臨海水族園飼育展示係 齋藤祐輔〕

(2011年06月24日)



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