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アジアゾウはな子の近況[1]
 └─井の頭 2011/05/19

 1949年(昭和24年)9月にタイから日本に贈られたアジアゾウの「はな子」は、今、日本の動物園で飼われているゾウのなかで、一番長生きのゾウになりました。1947年生まれということはわかっていますが、正確な誕生日が不明なため、毎年、年が明けると1歳年をとることにしています。ですから2011年の今年で64歳になります。日本の動物園のゾウ長寿記録は神戸市王子動物園で飼われていたアジアゾウのすわ子が樹立した65歳です。はな子も来年のお正月になれば、長寿記録に並ぶことができます。

 おかげさまではな子の体調は良好です。
 昨年、はな子の大きさをみなさんに実感していただこうと放飼場の右に実物大写真を掲示しました。この写真は1年半ほど前に撮影したものですが、腰のあたりを見ると今のほうがふっくらしているのがわかります。はな子の主食は皮をむいたバナナですが、鼻でバナナをつまみ、口の中に放りこむように食べる姿は食欲良好の証拠でしょう。

 しかし、若いゾウにくらべれば皮膚の新陳代謝が悪かったりしますので、やはり年をとっているようにみえます。
 性格も我が道を行くといった感じで、自分の思い通りになればよいのですが、気に入らないことは、自分のまわりから排除しようとする傾向が、ここ数年、強くなってきました。気にさわることがあるとちゃんと覚えていて、毎日はな子の世話をする飼育担当者にも、「嫌なことをしたあなたは嫌いです」と鼻を振って感情を表します。体の大きなゾウの力に人は逆らえません。鼻のあたりどころが悪ければ、大きな事故にもなりかねません。
 はな子はおとなしいゾウですが、人に飼いならされたイヌやネコと同じではありません。野生動物としての一面も持っています。
 そこで、飼育担当者にとって安全で、はな子にとっても今までと同じような世話を受けることができる方法を考えることにしました。飼育担当者が身を守るすべもなく、はな子と同じ空間にいることが事故の直接の原因になります。
 はな子と飼育担当者の直接的なふれあいは来園者の人気も高いのですが、安全のために、今までのような同じ空間でのふれあいから、柵を介したふれあいに移行していく計画です。はな子と飼育担当者とのふれあいを楽しみに来られるお客さんには、大変申し訳ないのですが、ご理解いただきたいと思います。

 今後もはな子が健康で長生きするように万全の注意を払い、日々の飼育にのぞみたいと思います。これからもこの欄を使ってはな子の近況をみなさんにお伝えしていきますので、楽しみにしてください。

〔井の頭自然文化園園長 成島悦雄〕

(2011年05月19日)



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