2010年7月18日、前年6月生まれのコビトカバ「コユリ」が、母親のエボニーから離れて独り立ちしました。
コビトカバは、カバとはちがって群れは作らず、単独で生活をする動物です。生まれてからしばらくは母親と行動をともにしますが、「ある時期」が来ると母子はべつべつになります。
「ある時期」と書いたのにはわけがあります。じつはこのコビトカバたちが、野生でどのようにくらしているのか、まだほとんど調べられていません。そのため長く飼育してきた動物園でも、母と子を分ける正しい時期がどれぐらいなのか、じつのところまだわかっていないのです。
コユリは、生後6か月ころからやんちゃさが増し、エボニーの尻尾を噛んでは逃げ回るようないたずらをして母親に怒られる場面も多く見られるようになりました。そこで生後7か月ころから独り立ちの練習を始めました。
まず、日中外にいるときだけ母と子を離すことにしました。当初コユリは、鳴きわめいて大騒ぎしましたが、2週間ほどで慣れたようです。いたずらに怒ってばかりいたエボニーも、自分だけの時間ができて、性格が穏やかになった気がしました。ちょうど子どもが幼稚園に行くようになった親子の感じでしょうか。
生後12か月ころからは、もう一歩進んで、エボニーが部屋に戻る時間を遅くし、先に帰ったコユリひとりで留守番をする時間を作りました。
そして7月18日。いつものように幼稚園にコユリを出した後、エボニーは、親子でくらしたコビトカバ舎から、カバ舎を間にはさんだ隣の水槽へ移動させました。夕方、いつものように部屋に帰ってきたコユリは、いつまで待っても帰ってこない母親をおとなしく待ち続け、4日目ついに母を求めて泣き叫ぶと、三日三晩鳴き続けましたが、その後はピタッと鳴かなくなり、少しずつ餌を食べる量も多くなってきました。今回、コユリは生後約13か月で独り立ちしたことになります。
まだまだ本調子とはいえないコユリですが、りっぱなおとなになるため、いつかは通らなければならない道です。また、現在エボニーは、次の繁殖に向けてコユリの父親であるショウヘイとお見合いを始めています。
写真上:お休み中のコユリ
写真下:エボニーとショウヘイのお見合い
〔上野動物園西園飼育展示係 山本達也〕
(2010年07月30日)
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